責任持てるのは誰か 住民投票で原発建設停止、決めた町長の警鐘
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票条例案を審議する臨時県議会が4月中旬にも招集される。1996年に全国初の条例による住民投票で、東北電力が計画した原発建設に「反対」を決めた新潟県の旧巻町(現新潟市西蒲区)で当時町長を務めた笹口孝明さん(77)は、県議会で県民投票条例案が否決された場合「県民の大きな政治不信を招くだろう」と警鐘を鳴らす。【木下訓明】
Q 条例案の否決が政治不信を招くと思う理由は。
A 原発の問題は、子や孫の世代はもちろん、100年200年先の未来にも影響する極めて重大な問題だ。福島第1原発事故の影響は14年たった今なお続いており、広範囲の人々の人生を大きく変えてしまった。再稼働の是非は、首長判断に任せるには問題が大きすぎる。多くの県民が直接投票で賛否を示したいと思っているはずだ。その機会を奪えば「政治離れ」が加速するだろう。
Q 経済界などは県議会による判断を望んでいる。
A 現在そして将来の県民の生命、健康、財産について、たった53人の県議会だけで責任を持って決められるのか。最終処分の見通しが立っていない「核のゴミ」(高レベル放射性廃棄物)は何万年単位の管理が必要だ。しかも今の県議会は再稼働問題を主要争点とした選挙で構成されたわけではない。何万年も先のことまで責任は持てないだろう。
Q 「県民投票は県議会の否定だ」という意見もある。
A とんでもない話だ。県民の声を代弁するのが県議の役割だ。旧巻町では「住民投票をすれば町が混乱する」といって、(笹口さんの前任の)町長と二十数人の町議会と利害関係者だけで原発の話を進めようとした。私は当時「巻町には議会制はあるが民主主義がない」と言った。民主主義とは有権者一人一人の意見を聞くことだ。県民投票は原発問題について県民の声を聞くことができる機会だ。議会がそれを潰すのは、理屈が成り立たない。
Q 原発政策は「国策」だから「一地域の住民で決めるべき問題ではない」という声もある。
A 国策論を安易に持ち出すべきではない。「国策だ」と言ってしまえば、民主的な議論は止まってしまう。しかも柏崎刈羽原発の運転は東京電力という「一企業」がやっていることだ。国民的な議論が行われて、コンセンサスが得られて、初めて「国策」と言えるのではないか。
Q 花角英世知事は「県民の意思を確認する」と繰り返している。その手法として「公聴会」も否定していない。
A 公聴会自体は否定はしない。ただ、公聴会で最終確認をするのはよくない。旧巻町でも「第1次公開ヒアリング」だとか、公聴会があったが、やらせや無視が横行した。公聴会で原発建設に反対する声が多いと「聞き置いた」というだけで済ませたこともあった。
Q 知事は再稼働の是非について判断した際は「信を問う」とも言っている。知事選で判断するのはどうか。
A 原発問題の一点だけを問うようなワンイシューの選挙ならば全否定はしない。いろいろな争点のうちの一つという状況ならばダメだ。旧巻町がそうだった。私の前任の町長は、選挙で原発問題を聞かれると「私という人間を信頼してくれ」などと言って、争点化を避けた。そして当選したら「私は原発問題で信任された町長だ」と言った。
Q 県民投票条例案を審議する臨時県議会に言いたいことはあるか。
A 何も日常の県政事項の全てを県民投票で決めるというわけではない。ただ原発問題の重大性を考えれば、その是非に責任が持てるのは、自分や子ども、孫の世代の将来も真剣に考えて判断しようと決めた強い意思を持った県民一人一人だけだ、ということを県議会は理解をしてほしい。
◇ささぐち・たかあき
1948年生まれ。旧巻町出身。70年明治大卒業後、家業の笹祝酒造に入社。リコール運動を受けた町長辞職に伴う96年の巻町長選で初当選、2000年まで2期務める。04年笹祝酒造社長就任。現在は同社相談役。
◇巻町住民投票
東北電力が旧巻町(現新潟市西蒲区)で計画した原発建設の是非を問うために1996年8月に全国で初めて実施された、条例に基づく住民投票。投票率88・29%。結果は原発反対60・86%、賛成38・55%だった。これを受けて、町は原発予定地の町有地を東北電力に売却しないことを決定。建設推進派が住民訴訟を起こすが2003年に敗訴。東北電力は計画を撤回した。
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