コメ、袋のまま置かないで 1種類ではない害虫、意外な侵入経路
「ふと気付いたら、保存していたコメに黒い虫がうじゃうじゃわいていた!」という経験がある人も多いのではないだろうか。春先以降はコメにつく害虫の活動が活発になる時期だ。食品害虫の専門家に聞くと「意外な侵入経路」の存在を教えてくれた。
コメにつく害虫として比較的知られているのが「コクゾウムシ」だ。体長3ミリ程度の黒く小さな甲虫で、象の鼻のような長い口を持つ。口で米粒に穴を開けて卵を産み、幼虫がサナギに成長し、成虫となって内側から米粒を食い破って出てくる。成虫は気温10度以上で動き回り、主な活動時期は4月から11月ごろだ。
コクゾウムシは精米所などで入り込むリスクがある。成虫は精米技術の発達により入り込みにくくなったものの、外から識別しにくい卵や幼虫は、消費者が手に取る未開封のコメ袋の中にまぎれている可能性がある。
国の研究機関「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の主席研究員で、食品害虫に詳しい宮ノ下明大さんは、コメにつく、気を付けたいもう一つの害虫として「ノシメマダラメイガ」を挙げる。体長1センチほどのガで、コメの外側や周りに卵を産む。幼虫はコメの胚乳やぬか層を食べて成虫まで成長する。関東地方では5月以降に活動が活発になるという。あまり知られていないが、一般家庭での発生頻度はコクゾウムシよりも多いとされる。
宮ノ下さんによると、このガは思わぬところからもコメの袋に侵入するという。
販売されているコメの袋は、輸送や陳列時に破れないよう、あらかじめ空気抜き用の小さな穴が開いているものが多い。成虫は、外を多く飛び回っており、網戸の隙間(すきま)や玄関を開けたときなどに家の中に侵入し、室内にある食品の近くに卵を産む。卵からかえった幼虫は、コメが買った袋のままで室内に置かれていると、この空気抜き穴からも侵入するという。
害虫を防ぐためには、短期間で食べきれる量の購入や保存の仕方に注意することが重要だ。
宮ノ下さんによると、コメは約1カ月で食べきることが理想。1カ月を超えると、コメの中にコクゾウムシの卵や幼虫がいた場合に成虫となって卵を産み、増殖するリスクが増す。
常温保存は避け、保存は日光の当たらない、涼しいところとすることも害虫の活動を抑えるのに有効だ。設定温度5度以下の冷蔵庫の中が特におすすめだ。害虫を見つけた場合は、日光の当たる場所で清潔な紙にコメを広げて取り除くとよいという。また、炊飯時にコメを研ぐことで、小さなコクゾウムシなどは除去できる。虫のわいたコメを食べても基本的には健康に影響はないとされるが、人によってはアレルギーを起こすリスクがあるため注意が必要だという。【町野幸】
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