北欧流・子どもの主体性の育て方とは 三重・伊賀の「森の学校」で学ぶ

2025/03/18 07:15 

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 世界でもトップクラスと言われる北欧の教育や子育てをヒントにした取り組みが、三重県上野森林公園(伊賀市下友生)で行われている。同園が2021年度から毎年実施している自然体験教室「お楽し森の学校」では、基本的に最小限の指導しかしない。発起人の神名(しんめい)清文所長(54)は「自然の中でのびのび活動してもらうことで主体性が育つ」とその意義を訴える。

 「ヒューッ!」。園内の森林で子供らが熱中していたのは、滑車付きのロープにしがみつき、傾斜に張られたワイヤを滑り降りる遊具「ターザンロープ」だ。この他にブランコや木材を組み立てた「秘密基地」なども全て小学4年から中学1年の計18人が作った。彼らはプログラム最終日の8日、自分たちの作った作品でめいっぱい遊んだ。

 お楽し森の学校は5回に分けて教室が開かれ、初回と2回目でロープの結び方やノコギリの使い方、木材の組み立て方を学習。その後、最終回までに参加した子供たちが自ら作る遊具を考え、作り方を学び、作品として仕上げていく。

 教室を立ち上げるにあたり、参考にしたのがフィンランドだ。同国は「自然の恵みをいただく」という意識から「自然享受権」という慣習法があり、自由に森に入ってリフレッシュできる。神名さんは「森に入ると『楽しい』という気持ちが湧いてきて、子供の知的好奇心を引き出せるのではないか」という可能性を感じ、広大な敷地に再現することにした。

 子供への教育もフィンランド流。同国では一人一人が積極的に考えることや、どうやって答えにたどり着くのかという過程を重視する教育理念があるという。これに倣って教室側では完成品を定めず、見守り役として子供の発想を尊重し、余計な口出しはせずに安全確認やサポートに徹する。すると、子供は挑戦と失敗を積み重ねることで、みるみる成長していくという。

 神名さんは埼玉県のNPO法人で働いていた際にこの教育方針を学んだ。「人生ではどこかで自分で決めなければならない時が来る。その時、何も言わなくても動いてくれるところまで成長してくれるのが理想。その一歩として、自然の中で自由な発想を表現してほしかった」と狙いを語る。

 その思いは参加児童にも届いたようだ。伊賀市の小学5年、宮川朔直(はっさく)さん(11)は「自分でいろいろ作っていくことが、気づいたら好きになっていた」と話した。朔直さんの母麻由さん(42)も「完成作品を見て大がかりなものだなと驚いた。一生懸命考えたのだろう」と息子の成長ぶりに驚いていた。

 上野森林公園は来年度も、お楽し森の学校を開く方向で調整している。問い合わせは同公園(0595・22・2150)。【原諒馬】

毎日新聞

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