群馬県産広葉樹、エレキギターの材料に 林業試験場が技術開発へ

2025/03/22 15:15 

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 ヤマザクラ、クリ、トチ、ケヤキ--。なじみのある群馬県産の広葉樹をエレキギターの材料として活用する研究に、県林業試験場(坂庭浩之場長)が乗り出す。エレキギターの材料はほぼ輸入材だが、世界的な物流の変化による「ウッドショック」や円安の影響で高騰かつ不足し、県産にも商機があると判断。広葉樹の製材や乾燥の技術を開発して音響の特性を調べ、2027年度までに、県内での材料生産とギターメーカーへの販売を目指す。【田所柳子】

 「こういう国産の材料がほしい」「いくらなら売ってくれるのか」。試験場が23、24両年にギターのイベント「横浜ミュージックスタイル」に県産広葉樹の板を出品すると、ギター工房の職人や専門学校、シンセサイザー制作会社などから次々と声がかかった。

 エレキギターの材料はマホガニーやローズウッドなど輸入材が中心。だが、国内の製造大手からも、兼ねて県産材を求める要望が寄せられており、実用化に向けて一歩踏み出すことにした。

 森林面積の約半分を広葉樹が占める群馬県。自生する種類も多い。しかし、広葉樹は針葉樹に比べても安価で取引され、主な用途は木材チップやキノコの原木、バイオマス燃料などにとどまっていた。

 林業関係者によると、広葉樹のマキは、運搬費用を除けば軽トラック1台分で500円程度と低価格で売られることもある。林業の事業者が、建築用資材として針葉樹のスギやヒノキを伐採する時、途中にある広葉樹を伐採しても「運搬費が無駄だ」と放置することすらあるという。

 試験場木材係の工藤康夫係長は「県内の広葉樹林を健全に維持するためにも、エレキギター活用による産業振興や木材の有効利用を促したい」と話す。

 試験場は今回、エレキギターの材料として、広葉樹を高値で販売できるチャンスと判断。現在は国内の300以上の楽器メーカーに対し、材料としての国産材の需要や意見を聴取しており、近く結果をまとめる。

 4月以降は各種広葉樹を使い、ギター向きの加工技術を開発。木目は、直線よりも渦巻き状などデザインが重視され、斜めや台形の型に製材するなどの工夫が要る。また広葉樹はひび割れや節が入って利用できる部分が少なくなる傾向があり、ギター材は建築用資材よりも十分な乾燥が必要なため、工程に手間がかかる。販売価格は未定だが、いかにコストを抑えるかも課題だ。

 制作の技術に加え、音響効果も調査。その後、希望する県内の木材事業者に加工技術を教え、ギター工場への出荷や個人事業者向け販売サイトの開設も視野に入れる。

毎日新聞

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