「あってはならない」へき地医療に衝撃 長崎・壱岐島ヘリ事故

2025/04/07 10:49 

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 長崎県の離島・対馬から福岡市内の病院に患者を搬送していた医療搬送用ヘリコプターが海上で転覆した状態で見つかり、患者や医師ら3人が死亡した事故を受け、医療関係者の間には驚きと悲しみが広がった。

 「あってはならないことが起きた。衝撃だ」。長年救急医療に携わり、ヘリでの医療活動をした経験もある福岡大学(福岡市)の石倉宏恭名誉教授はショックを隠せない様子で語った。

 石倉名誉教授によると、民間の医療用ヘリは、災害や事故の現場などに医師を乗せて向かうドクターヘリとは異なり、離島やへき地など医療機関の乏しい地域の病院で容体が悪化した患者をより高度な医療が受けられる都市部の病院に搬送する際などに使われるが、運用コストの高さなどから導入例は少ないという。

 離島での医療を志す医師は多くないものの、携わる医師には熱意ある人が多いという。石倉名誉教授は「困った人を助けたいとの思いで取り組んでいたはず。こんなことになったのは本当に残念だ」と悔やみ、「事故を機に離島医療や救急医療が守りに入ってはいけない。原因をしっかり究明すべきだ」と語った。

 「自分も患者の搬送でヘリに乗ることがあるので、率直に言って怖い」と話すのは沖縄県内の医療機関に勤務する救命救急医。「沖縄では連日のように離島から患者が搬送されてくる。医療が十分でない離島にとってヘリでの搬送は絶対的に重要だ」とした上で、「安全対策がどうだったのか検証してほしい」と話した。【平川昌範】

 ◇佐賀航空「調査、全面的に協力」

 ヘリを所有するエス・ジー・シー佐賀航空は「患者や病院関係者のご家族に深い悲しみを与えただけでなく、救急ヘリの運航に大きな不安を抱かせてしまったことについて、大変重く受け止めている。海上保安庁の捜査及び国土交通省の事故調査に全面的に協力する」とのコメントを発表した。【西貴晴】

毎日新聞

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