石綿被害救済基準の変更、被害者側に周知せず 救済範囲狭まる
「工場型」のアスベスト(石綿)被害を巡り、国が2019年に被害者側と和解する条件を見直し、賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)の起算点を早める基準変更をしていたことが国への取材で判明した。救済範囲が狭まることになるが、被害者側には周知していなかった。被害者側は「突然かつ秘密裏の変更だ」と批判している。
工場型の石綿被害では、最高裁が14年、「泉南石綿訴訟」の判決で、国の規制権限不行使を違法と認定。国は以後、責任期間(1958~71年)に石綿工場で働いた▽健康被害を受けた▽賠償請求権がある――との条件を被害者が満たせば、和解手続きで賠償金を支払ってきた。その際、20年で請求権が消滅する除斥期間の起算点は「都道府県の労働局が石綿による健康被害を認める決定(管理区分決定)を出した時」との基準に従って対応してきた。
しかし厚生労働省によると、19年になって、起算点を管理区分決定より前の「石綿被害の発症が認められる時」に早めた。起算点がさかのぼると請求権も早く消滅することになるが、被害者側に基準変更を周知していなかったといい、厚労省の担当者は「大きな運用変更ではないと考えた」と説明した。
起算点はなぜ一方的に見直されたのか。国側は、同じ石綿被害訴訟の福岡高裁判決(19年)を理由として挙げた。
この訴訟では、賠償金の支払いが遅れたことに伴って支払われる利息「遅延損害金」の起算点が争点となっていた。国側は遅延損害金の起算点を「労災の認定日」と主張したが、高裁判決は労災認定に先立つ「医師の診断日」と判断した。
遅延損害金は国側が被害者側に支払う利息のため、起算点が早まれば被害者が受け取る額は増える。国は上告を断念し、被害者側にとって有利になる高裁判決を受け入れた。一方で、この際に、除斥期間の起算点も併せてさかのぼる変更をしたとしている。
国の基準変更によって救済を受けられなくなった被害者は一定数いるとみられ、そのうちの1人が国に賠償を求めた訴訟の判決が17日に大阪高裁で言い渡される。1審・大阪地裁判決(23年12月)は被害者側の敗訴だった。2審でも除斥期間の起算点が争点となっていて、被害者側は「国は被害者の請求権を奪おうとしている。不公平で、不誠実」と訴えている。【岩崎歩】
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