ギーザバンタ 沖縄戦の悲しい歴史も、近年は絶景スポットに

2025/05/04 07:00 

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 サンゴや貝殻などに由来する石灰岩層が隆起した沖縄本島最南端部の沿岸は、波や風で削られてできた断崖絶壁が続く。その一部である沖縄県八重瀬町(やえせちょう)の「ギーザバンタ(慶座絶壁)」からは、2000年に完成した地下ダムの余剰水が滝となって海に流れ込むようになった。近年は絶景スポットとして注目を集めるが、80年前の沖縄戦ではこの場所でも多くの命が失われた。

 第二次世界大戦末期の1945年4月、沖縄本島に米軍が上陸。日本軍は本土決戦の時間稼ぎのために6月下旬まで組織的抵抗を続け、大勢の住民が戦闘に巻き込まれた。日米合わせて約20万人が犠牲になり、そのうち9万4000人(推計)が一般住民だったとされる。ギーザバンタ付近の岩場にも住民や日本兵が身を隠していたが、海から艦砲射撃を受けたり、崖から身を投げたりして命を落としたという。

 猛烈な砲爆撃で岩肌があらわになっていた断崖も今では緑に覆われている。青い海や滝とともに織りなす独特な景色を一目見ようと、多くの観光客が足を運ぶ。干潮時の潮だまりでは魚やカニが動き回り、波打ち際には釣果を待つ釣り人の姿も。平和あってこその風景が、穏やかに広がっている。【写真・文 喜屋武真之介】

毎日新聞

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