「ヌメ活」で早めの夏バテ対策 九大教授らが説く粘りの極意

2025/05/07 16:48 

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 モズク、山芋、納豆にオクラ――。

 共通点はもちろん、「ヌメヌメ」「ネバネバ」。免疫力向上や整腸作用といった効果があるこうした食材を、日々の暮らしで積極的に取り入れる。そんな「ヌメ活」なる健康習慣を、エビデンス(科学的根拠)に基づいて提唱する人々がいる。九州大大学院の研究者たちだ。「夏バテや夏インフルエンザ対策に『ヌメ活』をぜひ実践してほしい」

 ◇「ヌメ活」のススメ

 ヌメ活を推すのは、九州大大学院農学研究院の広瀬直人教授と、宮崎義之准教授。いずれも食品科学を主な専門領域とする。

 食品の中にある免疫を上げる成分を探し、健康のために有効活用する方法を日々、研究している。

 そもそもヌメ活とは、何なのか。

 「免疫力向上や腸内環境の改善、抗炎症、代謝促進といった効果が期待できるヌメヌメした食材を日々の食事で意識的に取り入れる、健康習慣のことです」(広瀬教授)

 該当する食材は、近所のスーパーで容易に手に入るものばかりだ。ただし、健康効果はそれぞれ異なる。例を挙げてもらった(丸括弧内はヌメヌメ、ネバネバの成分)

▽モズク、メカブ(フコイダン)

 免疫力の向上、アレルギー緩和、生活習慣病の予防

▽里芋、山芋(ガラクタン)

 便秘改善、血中コレステロール低下

▽納豆(ポリグルタミン酸)

 食後血糖値の上昇抑制、カルシウムの吸収促進

▽レンコン、オクラ、なめこ、モロヘイヤ(ペクチン)

 便秘改善、血中コレステロール低下、血糖値の抑制

▽長芋、山芋、モロヘイヤ(マンナン)

 食べ過ぎ防止、便通改善

▽山芋、オクラ、なめこ(糖たんぱく質)

 血糖値の調整、アミノ酸の合成

 ◇夏バテ対策に「ヌメ活レシピ」

 早くも5月から汗ばむ日が増えてくるようになった。夏バテは、もはや盛夏に限って起こるものではない。

 食欲低下、慢性的な疲れ、睡眠不足にイライラなど、夏バテはさまざまな症状を引き起こす。

 広瀬教授らは、こうした不調の要因は単なる「暑さ疲れ」にとどまらず、自律神経の乱れや腸の働きの低下、免疫力の低下なども関係していると指摘する。「だからこそ、夏バテ対策にヌメ活なんです」

 広瀬教授に、夏バテ対策にオススメの「ヌメ活レシピ」を聞いた。

 「モズクと納豆を混ぜ、あったかご飯にかけるだけ。簡単にできます」。いたってシンプルだが、「ヌメ活の万能選手」という。免疫力を高め、血糖値の上昇抑制といった健康効果もさることながら、栄養バランスも良く白米でエネルギー源も確保できるからだ。

 疲労回復などに効果的なクエン酸を含む梅干しを添えれば、味のアクセントになる。

 一方で、ヌメヌメ食材を使う際の注意点は、調理方法。含まれる栄養素には熱にあまり強くない成分もあるからだ。

 例えばモズクのフコイダンは加熱に強く、天ぷらやチヂミ、お好み焼きの具材として使われることもある。一方、山芋は加熱し過ぎると消化酵素などが効果を失ってしまう可能性があるという。

 モズクも水洗いをし過ぎると粘り成分が減ってしまうため、さっとすすぐ程度に。

 ◇食事に一品追加……毎日実践を

 広瀬教授は「健康効果によって食材の組み合わせを変える、食事に一品追加するなどして毎日実践することを心がけてみてください」と呼びかける。

 宮崎准教授は、世界最大規模の学術組織である米免疫学会でフコイダンの免疫に関する研究成果を発表した経歴を持つ。

 「フコイダンの免疫を上げる力は、研究結果を通じて実感しています。私たちが『ヌメ活』のメリットを広く伝えることで、健康生活につなげてもらえたらうれしいです」と語る。【千脇康平】

毎日新聞

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