年金法案、衆院厚労委で可決 基礎年金の底上げ案を付則に記載

2025/05/30 11:49 

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 年金制度改革関連法案と、自民、公明、立憲民主の3党が共同提出した基礎年金の底上げ策を付則に定める修正案は、30日の衆院本会議で3党の賛成多数で可決され、衆院を通過した。今国会中に成立する見通しだ。

 3党の修正案は、提出前に事実上削除された基礎年金の底上げ策を付則に定めている。実施は2029年の次期財政検証を踏まえて判断する。

 午前の衆院厚生労働委員会での採決は、国民民主党などが反対したが、藤丸敏委員長(自民)が職権で決めた。国民民主と共産の両党も修正案を提出したが、いずれも否決された。

 厚労委には石破茂首相が出席し、底上げ策について「将来の幅広い世代の給付水準の確保を可能にする」と強調。「基礎年金の位置付けや、改正の効果や趣旨を丁寧に説明してまいりたい」と述べた。

 基礎年金の底上げ策は厚生年金の積立金を活用し、将来的に就職氷河期世代以降を中心に3割下がると見込まれる基礎年金の給付水準を上げる狙いがある。基礎年金は全国民に共通し、厚生年金受給者にも恩恵がある。

 今回の法案の柱だったが、政府・与党は提出前に削除していた。厚生年金の受給額が一時的に目減りすることや、将来的に兆単位の国費が必要になるといった課題があり、夏の参院選での争点化を避けたい思惑が自民内にあったためだ。これに対し、野党は反発。立憲が求めた底上げ策の復活を与党が受け入れ、27日に3党が合意していた。

 法案は少子高齢化や、高齢者や女性の就労増などに対応することが主な目的だ。パートら短時間労働者の厚生年金加入を進める適用拡大では、「年収106万円の壁」と呼ばれる月額8万8000円の賃金要件が将来的に解消されるように対応する。現行では従業員51人以上の企業を対象にする企業規模要件は段階的に見直し、10年後の35年10月に撤廃する。

 一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額し、働き損になると指摘されている「在職老齢年金」を見直す。26年度から、減額が始まる基準を現行の月51万円から62万円に引き上げる。

 高所得者の厚生年金保険料の上限は27年9月から3年かけて引き上げる。最終的に保険料負担は月約9000円上がるが、もらえる年金額も増える。遺族厚生年金で、支給に男女差が残る場合の是正措置なども盛り込んだ。【宇多川はるか、寺原多恵子】

毎日新聞

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