大川原冤罪、謝罪の場に遺族は同席拒む 警視庁・東京地検トップ来ず
そこには、最も謝罪を求めていた遺族の姿はなかった。化学機械メーカー「大川原化工機」を巡る冤罪(えんざい)事件で、20日にあった警視庁と東京地検による謝罪。違法捜査の過程で亡くなった元顧問の相嶋静夫さん(享年72)の遺族は、謝罪の場に同席することを拒んだ。警視庁も東京地検もトップが来ず、捜査の検証も途上だからだ。「何が真実だったのかを明らかにしてほしい」。遺族はそう強く願っている。
この日、大川原本社の会議室には報道陣約70人や社員30人ほどが詰めかけ、謝罪の瞬間に立ち会った。午後1時前、警視庁の鎌田徹郎副総監は「亡くなられた相嶋様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」と30秒ほど頭を下げた。
続いて、東京地検の森博英公安部長が「二度とこのようなことを起こさないようにしたい」と2回、頭を下げた。謝罪を受けた大川原正明社長(76)と元取締役の島田順司さん(72)は厳しい表情を崩さなかった。
袴田事件や足利事件など過去の冤罪事件では、県警本部長と地検検事正という地元捜査機関のトップが謝罪をしている。警視庁や東京地検はそれより組織の規模が大きいとはいえ、対応の違いが際立つ。
相嶋さんの長男(51)は取材に対し、謝罪を拒否した理由について、トップからの謝罪ではないことと、検証が終わっておらず何に対して謝罪をするのかが不明確なことを挙げた。「特に母の気持ちの整理がついておらず、現段階での謝罪は受けられない」
相嶋さんの遺族は、警察庁長官や警視総監、検事総長宛ての要望書を用意した。関係者の厳正な処分や謝罪を求める内容で、謝罪の場で大川原側の高田剛弁護士が手渡した。
謝罪後、報道陣には非公開で警視庁・地検と大川原側の話し合いの場が40分ほど設けられた。その後に記者会見した大川原側によると、警視庁や東京地検などに求めている六つの要望のうち第三者を入れた検証などの実現を改めて訴えた。また、大川原社長らを起訴した塚部貴子検事の「より慎重に起訴の判断をすべきだったと反省している。関係者におわびする」とのコメントが地検から伝えられた。塚部検事は裁判の証人尋問では「間違った判断をしたと思わない。謝罪はしない」と語っていたが、最高検の検証にも協力する意向を示しているという。
高田弁護士は、警視庁の迫田裕治警視総監が警察庁外事課長や警視庁公安部長時代に今回の事件捜査や対応に関わっていることに触れ「謝罪は警視総監が望ましい。迫田さんが来てくれたら、より実りのあるものになった」と話した。大川原社長は「我々が訴えてきたのは無実だということ。謝罪という形でやっと彼らが認めた」と振り返った。
一方、警視庁で方面本部長を務めたあるOBは「ずさんな捜査の過程で1人の方がお亡くなりになっている。こんなひどい話はない。公安部の大失態により、日本警察の信頼は地の底に落ちた。警視総監でも足りず、警察トップの警察庁長官が謝罪に行くべきだ」と指摘した。【遠藤浩二、五十嵐隆浩、北村秀徳】
◇「謝罪論」の著書がある古田徹也・東大准教授(倫理学)の話
謝罪は一般に遅くなるほど誠意が疑われる。組織のトップが赴くかどうかは、問題をどれだけ重大と捉えているのかを表す。トップでないことに大川原化工機が違和感を覚えているならば、重大性の認識がずれているのだろう。警察・検察は反省を重ねてきたのであれば、人名や会社名を間違えることはまずない。真摯(しんし)さが疑われる。謝罪は信頼の回復に向けた「未来の約束」にもなる。検証の工程と結果をきちんと説明することは警察・検察の最低限の責任だ。
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