「娘は帰らないけど、区切りには」 墓前で執行報告の夫婦 座間事件
「娘は戻ってこない。何も変わりません」。神奈川県座間市の9人殺害事件で、当時高校3年生だった一人娘を奪われた福島市の男性(70)は、白石隆浩死刑囚(34)の死刑執行を受け、複雑な心情をのぞかせた。
7年9カ月前の2017年9月27日。17歳だった娘は家を出たまま連絡がつかなくなった。翌10月、座間市のアパートで9人の遺体が見つかった。そのうちの一人が娘だった。男性は「自分でその現場も犯人も見ていない。娘が死んだとは思えていない」と語る。
娘はどちらかといえばおとなしい子だった。頭に浮かぶ思い出は自宅近くで三輪車に乗る姿を見守ったこと。空き地で一緒にサッカーもした。娘は絵を描くのが好きで、将来はアニメに関わりたいと話していた。
男性が一人で暮らす自宅には、娘が幼稚園のころに使っていた「ハローキティ」のイラストがあしらわれた食器が残されている。男性は日常的にそれを使って食事をしているという。
「亡くなったと思っていないから今も使えるんだと思う。今も娘は日常にいて、一緒に暮らしている」と仏壇の遺骨に目をやった。
事件後は感情を押し殺して暮らす。「事件のことは考えないようにしている。考えたら生きていけない。精神的に参ってしまう」。それでも怒りや悲しみの感情は心の奥底に渦巻いていると感じる。
◇犠牲の26歳 母親「一つの区切りには…」
26歳で犠牲になった埼玉県春日部市の女性の母親(56)は「娘は帰ってこないけど、(白石死刑囚が)いなくなり、一つの区切りにはなったかな」と涙ぐんだ。この日、夫婦で女性の墓参りに行き、「今日執行されたよ」と伝えたという。
裁判を傍聴し、殺害の様子を詳しく話す白石死刑囚には「『よくも我が子にそんなことを』と殺してやりたいほど憎かった」と振り返る。「世の中の人が事件を忘れても、私たちはずっと忘れない。もうこういう事は起きてほしくない」
◇記者との面会は約20回
白石死刑囚は19年9月~20年12月に約20回、当時の収監先の立川拘置所(東京都)で、毎日新聞記者と面会した。記者に対し、事件は「直情的に起こしたのではなく、全て計算ずくでやった」と話した。
被害者と知り合った手段はツイッター(現X)だった。過去に売春のあっせんで利用しており、「人や情報が動くと実感した。使えると思った」と説明した。
最後の面会は、判決翌日の20年12月16日。死刑が言い渡された時は「何も考えていなかった。汗もかかないし、心臓もどくんどくんしないし。分かり切っていたことだから」と話した。
一貫して「家族に迷惑をかけたくないから控訴はしない。早く死刑になりたい」と言い続けた。被害者に対しては「謝罪の気持ちはない」と話していた。
面会は1回につき30分ほど。毎回、質問には淡々と答え、感情を表に出すことはほとんどなかった。
白石死刑囚の主任弁護人だった大森顕弁護士はこの日、「長く弁護人をつとめ、さまざまなことがあっただけに、気持ちの整理がつかず、コメントが出てまいりません」とコメントした。死刑判決の確定後も定期的に東京拘置所で面会を重ね、死刑執行の3日前の24日午後にも面会していたという。
一方、被害者遺族の弁護士3人が東京都内で記者会見を開いた。米田龍玄弁護士は「刑の執行にはもっと時間がかかると想像していた」と言及。死刑制度に反対する日本弁護士連合会の立場などに触れつつ、「刑の執行は被害者遺族にとって区切りになり、前に進むきっかけになる」と死刑制度の必要性を強調した。【松本光樹、田原拓郎、最上和喜、菅健吾】
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