手厚い東京、隣接の神奈川では… 多摩川を挟んで子育て支援に格差

2025/07/13 12:01 

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 20日投開票の参院選では、各党が公約に掲げる子育てや教育の支援も焦点になっている。現状では居住する地域によって支援にばらつきがあり、手厚い東京都と、隣接する神奈川では格差が目立っている。有権者からは国に対して平等な支援拡充を求める声も出ている。

 「これからお金がかかるので、神奈川でも支援が広がればありがたい」。川崎市中原区で小学生2人を育てる女性会社員(44)は、都の支援策についてこう語る。自宅の近くには都県の境となる多摩川が流れる。

 女性は都内に、夫は横浜市内に勤務先があり、その中間に当たる中原区に15年ほど前に自宅を購入した。周辺は緑が多く、児童館もある。子どもが通う小学校ではSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みにも力を入れ、子育て環境には満足しているという。だが、子どもが中学受験を控えるなど金銭面での不安は残る。

 多摩川を挟んで子育て支援には大きな差がある。都では2024年度に世帯年収の条件を撤廃して私立高校の授業料を実質無償化。さらに市区町村に補助する形で、公立小中学校の給食費無償化を推し進めた。

 政府は追随するように、25年度に高校授業料の支援対象世帯を拡充した。26年度から給食費の無償化を目指す動きもあるが、当面は小学校だけだ。慎重な背景には厳しい財政状況があるとみられる。

 一方、大企業が集中する東京都では法人関連の税収が大きく、支援策を次々と打ち出す。23年度から18歳以下の都民を対象に、児童手当とは別に月5000円の支給を開始。今年9月から0~2歳の全ての子どもの保育料無償化も乗り出す。

 「我々から見ているとうらやましい限りと言わざるを得ない」「近隣県としてはもう戦々恐々だ」。5月に都内で開かれた関東地方知事会では、先行して支援を充実させる東京都に対して近隣県の知事が次々と不満を漏らした。

 税源の偏在を訴える声も相次ぎ、長野県の阿部守一知事は「教育費や子ども医療費など国が地方に任せて放置しているような状況になっている。国が積極的にやるべきではないか」と述べた。

 前述の女性も同じように考える。「子育てや教育にはお金がかかるのに、住んでいる地域で支援が異なるのはおかしい。国として平等に配分してほしい」。参院選では政党や候補者の訴えを比べて投票するつもりだ。【蓬田正志】

毎日新聞

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