新素材ベンチャー元幹部、社外秘の情報持ち出し容疑 書類送検

2025/08/01 11:20 

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 石灰石が主原料の新素材を開発・製造する新興企業「TBM」(東京都千代田区)の製品開発データを不正に持ち出したとして、警視庁生活経済課は1日、同社の元次世代事業推進室長の男性(57)=東京都世田谷区=を不正競争防止法違反(営業秘密領得)の疑いで、元社員の男性(34)=東京都中野区=を同法違反ほう助の疑いで書類送検した。

 同社は、プラスチックや紙の代替となる素材「LIMEX(ライメックス)」を主力商品とする。創業10年以内で企業価値10億ドル以上の非上場ベンチャー企業を指す「ユニコーン企業」として知られていた。

 元室長の書類送検容疑は2023年6月、同社が持つ、二酸化炭素を回収して燃料や資源に変える「カーボンリサイクル」の技術に関する分析データを、会社から貸与されているパソコンから、外部のサーバーにアップロードして保存したとしている。元社員の容疑は、元室長を手助けしたとしている。

 元室長は容疑をおおむね認め、元社員は認めているという。警視庁は、起訴の判断を検察に委ねる「相当処分」の意見を付けた。

 警視庁によると、幹部社員だった元室長は23年6月、同社の事業と競合する会社を起業したいと会社側に相談したため、社内調査を受けていた。持ち出したデータは同推進室でも一部の社員しか見られないもので、約7日間かけて約80のファイルを外部に保存したとみられる。

 同社は23年9月、元室長が出願準備中の特許に関する資料など営業秘密に当たる情報を無断で外部のデータベースに移動させ、私的に利用しようとしたとして、同8月に懲戒解雇処分にしたと発表。元室長が転職や独立して事業をすることを計画し、他社と多数回、面談や連絡をして社外秘の情報を伝えたとしていた。

 TBMは11年設立で、社員数約300人。23年には、経済産業省が潜在力の高いスタートアップ企業を集中して支援するプログラム「J―Startup Impact」に選定された。【菅野蘭】

毎日新聞

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