東洋大、田久保市長の卒業証書発行を否定 伊東市議会が不信任決議

2025/09/01 20:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「田久保真紀市長が今後も市長であり続ける限り、市民生活に暗い影を落とし続ける」――。静岡県伊東市の田久保市長の学歴詐称疑惑を巡り、市議会は1日の不信任決議でこう糾弾し、早期の辞職を求めた。田久保市長は10日以内に辞職・失職か市議会の解散を選択する。同日公表された市議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書では、東洋大が田久保市長に卒業証書を発行していなかったことも明らかになった。

 不信任決議案の賛成討論には5人の市議が登壇。「市民の思いを踏みにじった」「今のままでは議会が成立しない」「市政の混乱が市民の分断を生んでいる」「市民に響く説明が必要だった」「身から出たさび。失望した市民の声を聞くべきだ」など厳しい発言が続いた。

 田久保市長はその間、手元の資料に目を落としたり、メモをとったりしながら聞き、採決の時には賛成の意思を示すため起立した市議たちをじっと見つめていた。

 不信任決議に先立ち、百条委の調査結果の報告があった。東洋大からは「成績証明書など各学年次の単位の取得状況が分かる記録」「履修要覧の卒業要件にかかわるページの写し」などの提出を受け、「4年次に卒業できる見込みがなかった」ことが判明したという。

 百条委の井戸清司委員長は、大学が卒業証書を発行していないと回答したことも踏まえ、市長が「卒業証書」だとしている文書は「偽造された可能性がある」と指摘。「『大学を卒業していたと勘違いしていた』とする主張自体が成立することはあり得ない」と批判した。

 市議会は、百条委への出頭拒否▽「卒業証書」だとする文書の提出拒否▽証人尋問での証言拒否▽虚偽の証言――の4件を地方自治法違反の疑いで刑事告発することを決定。不信任決議案を審議する前の40分の休憩中に、中島弘道議長名の告発状を市職員が伊東署に提出し、即座に受理された。

 また、市長が市職員に「卒業証書」だとする文書を見せた結果、市広報誌には「東洋大法学部卒業」という誤った内容が掲載されており、百条委は市に対し、偽造有印私文書行使の疑いがあるとして、調査や刑事告発など適切な対応を求めた。同容疑を巡っては、千葉県在住の男性が刑事告発し、県警が受理した。

 不信任決議後、中島議長は「(議会の)大きな決意をしっかり受け止めて一刻も早く辞職してほしい」と話した。また青木敬博副議長は来年度予算案にも波及しかねないと指摘し、「市民に与える影響が大きい」と述べた。【若井耕司】

毎日新聞

社会

社会一覧>