「幻の果実」で復興を 胆振東部地震7年、震度7の厚真町で農家奮闘
北海道で史上初めて震度7を観測した胆振東部地震の発生から6日で7年となる。震度7の揺れに見舞われた厚真町は、ハスカップの栽培面積の3割を誇る「日本一のハスカップのまち」。地震で大きな被害に遭ったが、町内の生産者はハスカップで復興を後押ししようと、前を向き奮闘し続けてきた。
胆振東部地震では、災害関連死を含めると道内で44人が犠牲となった。厚真町では特に被害が大きく、大規模な土砂崩れで37人が亡くなった。
2018年9月6日午前3時7分。前夜、遅くまで自治会のお祭りの片付け作業に追われ、リビングのソファで横になっていた山口農園の山口善紀さん(55)は跳び起きた。激しい揺れで今にも倒れそうなキャビネットを夢中になって押さえた。
家族はみな無事だったが、住居は一部損壊。複数あった納屋は大きく壊れ、のちにすべて解体することになった。丹精を込めた農園ではハスカップ5000本のうち約500本が崩れてきた大量の土砂でなぎ倒された。
青紫色の甘酸っぱい実をつけ、1年のうち初夏の短い時期に旬を迎える希少性から「幻の果実」とも呼ばれる、北海道特産のハスカップ。胆振東部地震では町内の4万本のうち1万1000本が失われた。
地震から数日後、復旧作業もほとんど進まない中、札幌市の催事担当者から山口さんに電話があった。「19日からの物産展、参加は無理ですよね」。生産者が頑張るために需要を増やそうと、百貨店の物産展に初出店することになっていた。
当然、準備はできていない。しかし、「行きます!」と即答した。「被害にあった自分だからこそ堂々とPRできる。仲間のためにもやりたい」との思いからだった。
山口農園がハスカップ栽培を始めたのは1978年。母紀美子さん(77)が勇払原野の野生種約1000本を畑に移植した。当時はハスカップは酸っぱく、苦いのが当たり前と言われていた。
「苦い実がなっている木に印をつけたら100円あげる」。紀美子さんにこう言われた山口さんと1歳下の弟は、子どもならではの敏感な味覚で苦い木を選び、紀美子さんはそれを取り除き、年月をかけておいしい木だけをえりすぐった。
「わたしは『農家を継ぐな』と育てられたんですよ」と山口さんは苦笑する。専門学校を卒業して製紙会社に勤めたが、農園を営んでいた父が体を壊したため退職した。
苫小牧市で接客業のアルバイトをしながら家業を手伝っていたとき、ハスカップ狩りに訪れた客が友だちに「ここの農家、粒が大きくておいしいの」と自慢げに話すのをみて驚いた。
「もしかすると可能性がある作物かもしれない。農家を継いで、やってみたい」
経営の厳しさを知る紀美子さんは反対したが、「40歳までに軌道に乗せられなければやめる」と約束し、認めてもらった。2005年。34歳の時だった。
その後、09年には大粒で食味のよいハスカップ「あつまみらい」と「ゆうしげ」を品種登録。とまこまい広域農協厚真町ハスカップ部会員だけが購入可能とし、町内に広めていった。13年には栽培面積日本一となった。
20年には新型コロナウイルスが感染拡大したことで物産展の開催ができなくなり、東京、大阪など大都市圏でのPRが難しい状態となった。
最近の温暖化の影響でハスカップの収量が減り、原料確保が難しくなったため、24年には町中心部でアンテナショップとして経営していたカフェの閉店を決断した。
しかし、同じ年に「厚真産ハスカップ」が特許庁の地域団体商標を取得。ひとつの区切りを迎えた。
今、山口さんが新たなチャレンジと位置づけるのは道内のハスカップ生産者との連携だ。製菓会社とのつながりから、千歳市や富良野市の生産者に技術指導を始めており、手応えを感じている。
厚真の生産者の理解が得られれば、将来的には「あつまみらい」「ゆうしげ」を道内の生産者に供給したい考えもある。「技術指導も行って、北海道の生産者が連携できるようにしたい」と夢をふくらませている。【平山公崇】
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