丹後ちりめんの古布を再生 平和願って絵画「ゲルニカ」再現 京都

2025/09/10 06:15 

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 京都府宮津市在住の工芸作家、石坪良雄さん(78)の個展「布大事」が、江戸時代の丹後ちりめん商家・旧尾藤家住宅(与謝野町加悦、国重文)で開かれている。ピカソの「ゲルニカ」を丹後ちりめんで再現した作品のほか、古布を数百枚縫い合わせて作ったジャケットやワンピース、バッグなど40数作品が展示されている。【塩田敏夫】

 「小豆三粒包める布は捨てるな」。石坪さんは、東北地方に古くから伝わるとされる言葉を大切にしている。布が貴重だった時代を思い起こし、古布をさまざまな作品に再生する試みを続けている。

 「ゲルニカ」はスペインの画家、ピカソの作品。1937年にドイツ空軍の無差別攻撃を受けたゲルニカを描いた。若い時からずっとこの作品が心に残っていた石坪さんは、ロシアによるウクライナ侵攻に衝撃を受け、丹後ちりめんで再現することを思い立った。2022年の侵攻直後のことだった。

 羽子板を作るように、型紙を作って綿を置き、丹後ちりめんでくるむ「押し絵」の技法で制作した。一刻も早い戦争終結を願い3カ月かけて完成させた。

 侵攻から3年以上たったが、今も戦争は続く。パレスチナ自治区ガザ地区でも戦闘が続き、市民が飢餓状態におかれている。

 石坪さんは「ピカソのゲルニカには赤ちゃんが描かれている。これこそが戦争の本質だと思いました。戦争は常に弱い立場の者を死に追いやる。なんとか戦争を止めなければなりません。声を上げるしかない」と話した。

 個展は11月4日まで(午前9時~午後5時)。水曜日休館。

毎日新聞

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