法廷で検察側が詳述した「裏金作り」の仕組み 大野元参院議員初公判

2025/09/10 20:54 

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 自民党の派閥瓦解(がかい)へとつながった裏金事件で、元参院議員の大野泰正被告(66)は10日の東京地裁の初公判で潔白を訴えた。検察側は不記載額が最多だった大野元議員側の「裏金作り」の仕組みを詳述した。

 午後1時半過ぎ、東京地裁104号法廷。黒のスーツにネクタイ姿で入廷した大野元議員は傍聴席に向かって一礼し、福家康史裁判長から職業を問われると「無職です」と答えた。

 起訴内容の認否では秘書との共謀を否定する一方で、「国民の皆様に多大なる政治不信を招いたことを心から深くおわびする」と陳謝した。

 80人以上の自民党議員側の収支報告書に不記載や誤記載があったが、清和政策研究会(旧安倍派)に所属していた大野元議員の不記載額約5100万円は最多だった。詳細を説明しないまま今夏の参院選に出馬せずに政界から姿を消し、法廷でのやりとりが注目された。

 検察側の冒頭陳述によると、大野元議員側は初当選した翌年の2014年から派閥の政治資金パーティー券の販売を始めた。割り当てられたノルマを上回った売り上げは派閥から議員側に還元される仕組みで、地元・岐阜や東京での支援者らへの販売状況を元秘書の岩田佳子被告(62)から一覧表などで報告されていたとした。

 旧安倍派の事務局からは1回で「ノルマ超え」として1000万円超の現金を渡されることもあり、元秘書だけでなく元議員自身も直接受け取ったことがあったという。一部は元議員のクレジットカードの引き落とし口座に入金され、飲食費などのカード支払いに充てられたとした。

 大野元議員は自民初代副総裁を務めた大野伴睦(ばんぼく)氏を祖父に持つ。父は元運輸相、母も参院議員を務めた世襲議員だ。

 法廷で元議員は「政治以外のことは考える余裕もなく、政治資金の事務処理のことなど全くもっておろそかになっていたことは事実」とも述べた。【安達恒太郎、安元久美子】

毎日新聞

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