車のスマホ「ながら運転」 死亡事故率3.7倍 被害家族、厳罰化訴え

2025/09/13 12:00 

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 運転中に携帯電話で通話したり、スマートフォンを注視したりする自動車の「ながら運転」(ながらスマホ)を巡り、被害者やその家族からは厳罰化を求める声が上がっている。

 警察庁の統計によると、自動車のながらスマホは2019年12月に罰則が強化され、死亡・重傷事故は19年の105件から20年は66件に減少した。しかし、23年は厳罰化前を上回る122件となり、24年は136件とさらに増えている。スマホのアプリがより便利になっていることが一因と考えられている。

 死亡事故の発生率は携帯電話などを使っていない時より約3・7倍高く、危険性が浮き彫りになっている。

 法務省は24年に設置した有識者検討会で、ながら運転を自動車運転処罰法に規定される危険運転致死傷罪の適用対象にするか議論した。

 危険運転致死傷罪は車の制御が困難な高速度で走行したり、飲酒で正常な運転が難しい状態だったりして、死傷事故を起こした場合が対象となる。ながら運転が、これらの行為に匹敵する危険性・悪質性があるという見解は出席者の間で一致した。

 ただ、災害など緊急性が高い情報をスマホで確認するケースなど、ながら運転のすべてが直ちに悪質とは言い切れないとも指摘された。

 検討会がとりまとめた報告書は、悪質な行為だけを的確に切り出して危険運転致死傷罪に問うことの困難さに言及。裁判での立証上の課題もあり慎重な検討が必要だとして、検討会では適用対象に含めるかの結論は見送られた。

 滋賀県野洲市では24年、下校中の小学2年の男児が赤信号を無視して交差点に進入したダンプカーにはねられ、重体となった。運転手は事故を起こすまで20分間にわたって携帯電話で通話していた。運転手は過失運転致傷罪に問われ、禁錮2年4月の判決が言い渡された。

 男児の母親は「運転に気を付けた上で起きてしまった事故と、意図的に携帯やスマホを触っていて起こした事故は悪質性が違う」と憤る。

 その上で「携帯やスマホの使用履歴などから過失か危険運転なのかは分かるのではないか。厳罰化の動きが進まなければ、息子が被害に遭ったような事故は『過失』で済まされ、なくなることはない」と訴える。【日高沙妃】

毎日新聞

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