抗議で自衛隊訓練を一部できず 防衛相「大変遺憾」 沖縄では反発

2025/09/19 20:02 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 中谷元・防衛相は19日の閣議後記者会見で、宮古島(沖縄県)で13日に実施された自衛隊の訓練について「妨害行為により訓練内容の変更を余儀なくされた。大変遺憾だ」と述べた。会見の冒頭発言でこうした認識を示すのは異例。中谷氏は「反対の立場を含め、意見表明すること自体を否定するものではない」とも言及したが、沖縄では反発の声が上がっている。

 防衛省によると、13日の訓練は、日米が共同で毎年実施する大規模訓練「レゾリュート・ドラゴン」の一環。宮古島の港から駐屯地まで自衛隊車両で物資を輸送する計画だったが、市民団体に道を塞がれて車両を移動できなかったという。

 会見で中谷氏はまず「沖縄で過度の抗議活動が続いていることに一言申し上げる」と発言。宮古島では13日のほか、8月の防災訓練の際も「とある団体から拡声器による抗議を受けた」とした。さらに、9月12~14日に沖縄市で開かれた「沖縄全島エイサーまつり」を巡り、一部団体から自衛隊員の参加自粛を要請されたことも明らかにした。

 沖縄が背負う基地・訓練負担と抗議活動との関連性を問われると、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさや自衛隊の役割を改めて強調。「私自身が先頭に立って発言し(国民の自衛隊に対する)信頼を増していくことが必要ではないか」と説明した。自身の発言が国民を萎縮させるとの指摘には「訓練は迷惑を掛けないように行っているつもりだ。(抗議活動は)良識と度量を持ってやっていただきたい」と反論した。

 防衛省は近年、宮古島や石垣島、与那国島などの先島諸島に自衛隊駐屯地を次々と開設し、ミサイル部隊などを配備してきた。駐屯地のほか、島の空港や港湾を利用した日米共同訓練も盛んに実施され、今回の「レゾリュート・ドラゴン」は過去最大規模となった。

 一方、沖縄では第二次世界大戦末期の地上戦で多くの県民が犠牲になった経験から「有事の際に攻撃対象となる」との懸念も根強い。宮古島でも2019年の駐屯地開設時から市民団体が駐屯地外での訓練などに抗議活動を続けている。

 13日に宮古島で抗議活動をした市民団体「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子共同代表は中谷氏の発言を受けて「『妨害』と言うが、私たちは武器も持たず、暴力行為もしていない。小さな島の小さなグループが『表現の自由』として抗議の意思を示している。国と対等な力関係にはなく、排除しようと思えばいつでもできるし、実際に今まで排除されてきた」と訴えた。

 清水さんらが8月に宮古島で行われた陸上自衛隊の防災訓練に抗議した際には、駐屯地トップの1等陸佐が「許可を取れ」などと威圧的に迫り、後日、謝罪するに至った。清水さんは「防衛相は軍拡に反対する人たちの声を抑え込もうとしている」と非難した。

 沖縄県の玉城デニー知事も19日、報道陣の取材に「憲法が認める表現の範囲内において抗議活動は認められている」と指摘。米軍基地に加え、自衛隊の増強が進んでいる現状に「他県の市民とは受け止め方が違う。中谷防衛相や自衛隊は、なぜ厳しい意見や抗議活動が起こるのかということを受け止めて、地元への丁寧な説明を尽くしてほしい」と求めた。【松浦吉剛、喜屋武真之介】

毎日新聞

社会

社会一覧>