四国の瀬戸内海で海鳥ウトウ、初の観察記録 撮影に成功

2025/09/23 15:15 

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 愛媛県今治市・津島沖の来島海峡で8月、ウミスズメ科の海鳥・ウトウの姿が確認された。同市・大島在住の日本野鳥の会愛媛会員、西尾喜量(よしとも)さん(31)が観察し、撮影に成功した。ウトウは北太平洋の沿岸に広く分布し、国内では北海道や東北の沿岸部で繁殖するが、写真報告に基づくものでは四国の瀬戸内海沿いで初の観察記録とされる。

 観察されたのは8月8日午前9時ごろ。同市吉海町の離島・津島の西端から約1キロ沖で約10分間、姿を確認できた。ハトほどの大きさの1羽が静かな水面に浮き、プレジャーボートで約3メートルまで近づいても間合いを保ちながら逃げる様子は見せず、焦点距離600ミリの望遠レンズで画像に収めることができた。

 上くちばしの付け根に、特徴である小さなコブがあることからウトウと判明。根拠記録となる写真とともに日本野鳥の会愛媛に公式に認定された。合わせて愛媛・南予生物研究会のオンライン報告「南予生物フィールドノート」で、8月28日に公開された。

 雌雄同色のため見た目から雌雄は判別できず、観察中は鳴き声を出すこともなかった。主に夏場、古い羽が新しい羽に生え変わる際に新しい羽を守るストロー状のさや(羽鞘(うしょう))が残っていることも確認され、少なくとも生後1年以上の若鳥と考えられるという。

 西尾さんによると、日本鳥類目録改訂8版(2024年、日本鳥学会)では、四国で高知、徳島両県でのウトウの公式観察記録がある。愛媛県内では1995年に今治市・関前諸島の大下(おおげ)島沖で観察された記録はあるが、根拠となる記録写真の入手には至らず、愛媛県鳥類目録(24年、日本野鳥の会愛媛)ではウトウは参考記録種となっている。

 今治市の大島とその属島である津島、鵜島(うしま)などでの鳥類調査をライフワークとする西尾さんは「30年前に関前諸島で観察した人がいたので可能性はあるものの、限りなく低いと思っていた。(参考記録とされた)当時の観察者の無念を晴らすことができてうれしい」と話す。今後も絶滅危惧種を含めた鳥類の調査をこの地域で進める。【松倉展人】

毎日新聞

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