映画「国宝」に登場 旧京都平安ホテル、京都府が「市場調査」実施へ

2025/09/28 09:15 

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 文化的価値が高い日本庭園があり、2023年3月に閉鎖されたままの「京都平安ホテル」(京都市上京区)の土地や建物について、民間事業者から広く意見や提案を聞く「サウンディング(対話)型市場調査」を京都府が実施する。現在、土地と建物は地方公務員が加入する地方職員共済組合が所有しているが、府が取得することを視野に利活用策を検討する。

 京都平安ホテルは京都御苑の西側にあり、地方公務員の福利厚生施設として1980年に開業した。鉄骨鉄筋コンクリート造り6階建て、延べ床面積は約1万平方メートル。客室は約90室あり、修学旅行生などを含め一般客も受け入れていた。

 ホテルは地方職員共済組合府支部(支部長=西脇隆俊知事)が主体となって運営していたが、新型コロナウイルス禍もあって宿泊者や利用者が減り、業績が悪化。2022年6月末で休業し、翌23年3月に閉鎖した。

 ホテルを有名にしたのは、江戸時代からあったという日本庭園だ。かつて公家屋敷があった場所で、敷地(約5100平方メートル)には近代日本庭園の先覚者と呼ばれる小川治兵衛が大正時代に改造した地泉(ちせん)回遊式の日本庭園(約1600平方メートル)が残る。米国の日本庭園専門誌のランキングで上位に入り、葵祭のヒロイン「斎王代」の撮影場所にもなっていた。ホテル閉鎖後も価値を損なわないよう庭園は手入れされており、最近では映画「国宝」の撮影で使われた。

 敷地の西側に隣接する府有地(約1000平方メートル)にはホテル職員宿舎として使われた建物があるが、閉鎖されている。府は、現在は地方職員共済組合が所有している京都平安ホテルの土地・建物と、ホテル職員宿舎だった建物がある府有地を一体的に利活用することを想定。同組合からは、ホテルの土地・建物を府が取得する意思があるかどうかの打診がすでにあり、府は取得も視野に利活用策を検討する方針だ。

 その上で、一体的な利活用計画の策定に向け、民間事業者のアイデアやノウハウ、資金なども不可欠で、府はサウンディング型市場調査を実施することにした。市場調査に参加する企業・団体とそれぞれ10月に対話し、アイデアや手法などを聞く方針。

 市場調査では、ホテルと職員宿舎だった建物がある土地計約6100平方メートルを府が貸し付け、民間事業者が建物を運営する「定期借地権方式」を前提に、アイデアなどを求める。現存するホテルの建物については、改修だけでなく、取り壊して新たに建物を建てることも可とする。ただし、分譲マンションなど複数の者が所有権を持つようになる施設は不可とする。

 歴史的、文化的価値がある日本庭園については、現状を適切に維持して保全し、府民などが鑑賞できるようにすることを提案の要件とする。府は民間事業者からの提案を参考にし、今後の利活用策の計画策定を進める見通し。【久保聡】

毎日新聞

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