国連、核合意に基づく対イラン制裁が再発動 10年ぶり

2025/09/28 09:55 

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 イラン核合意に基づく国連の対イラン制裁の解除措置が米東部時間27日夜(日本時間28日午前)、およそ10年ぶりに失効した。核開発に関与したとみなされた個人や組織の資産凍結、イランの武器や関連品目の売却や移転を禁じるなどの制裁が復活し、すべての国連加盟国を拘束する。イランは強く反発しており、査察再開に向けた国際原子力機関(IAEA)との合意破棄を警告している。

 2015年のイラン核合意は、安保理の常任理事国(米英仏中露)とドイツ、イランとの間で結ばれた。イランがウランの濃縮度を原発燃料程度の3・67%にとどめることや濃縮ウランの貯蔵量を制限する見返りに、一連の制裁を解除することを定めた。核合意を承認した同年の安保理決議には、合意違反を理由に制裁を復活させる手続きも盛り込まれ、16年1月に制裁は解除された。

 英仏独の3カ国は今年8月下旬、イランに重大な不履行があったと安保理に通知し、制裁の復活に向けたプロセスが始まった。制裁復活を見送る条件として、核査察の全面的な受け入れや米国との協議再開を迫ったがイランは譲歩しなかった。安保理では制裁の解除を継続する決議案を2度採決にかけたが、いずれも否決され、制裁解除の失効期限を迎えた。

 英仏独は28日、共同声明で制裁の再発動を「歓迎」し、すべての国連加盟国に順守を呼びかけた。また、「制裁の再発動は外交の終わりではない」とし、イランとの協議を続ける姿勢を強調した。

 米国はトランプ政権1期目の18年に核合意を一方的に離脱し、すでに厳しい制裁を再発動している。これに反発したイランが合意による制限を超えるウラン濃縮などを進めてきたという経緯がある。

 イランのアラグチ外相は26日、「米国は外交を裏切り、英独仏がそれを葬り去った」と述べ、責任は米欧側にあると非難した。

 イランを擁護するロシアのラブロフ外相は27日、米ニューヨークの国連本部で、制裁の復活は「違法」だと主張した。ロシアと中国は、安保理で直前まで制裁復活の回避を試みたが、支持を広げられなかった。

 米国とイスラエルは6月、イランの核施設を攻撃した。トランプ米大統領はイランの核施設を完全に破壊したと主張している。国際原子力機関(IAEA)によると、イランは攻撃前の時点で濃縮度60%の高濃縮ウラン約440キロを保有していたが、現在その所在は不明のままだ。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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