「FXはギャンブルと同じ」 三菱UFJ元行員に実刑、専門家が警鐘

2025/10/06 16:32 

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 三菱UFJ銀行の支店の貸金庫から顧客の金品(計約3億9000万円相当)を盗んだとして窃盗罪に問われた元行員、山崎由香理被告(47)に対し、東京地裁は6日、懲役9年(求刑・懲役12年)の実刑判決を言い渡した。山崎被告が支店長代理のキャリアを台無しにしてまでのめり込んだのは、外国為替証拠金取引(FX)だった。専門家は「FXの特徴はギャンブルと同じ。誰にでも起こりえる」と警鐘を鳴らす。

 被告の公判での説明によると、元夫がFXで利益を上げているのを見て自身も始めるようになった。平日はFX、土日はネット競馬にはまり、2013年ごろには借金が膨れ上がった。検察官は法廷で「民事再生手続きをした。借金は1200万円に上った」と説明する元夫の供述調書を読み上げた。

 ギャンブルをしないとの誓約書を元夫と交わしたものの、被告はFXをやめられず、20年以降は顧客の金品に手を付けるようになった。一連の事件が発覚すると元夫とは離婚した。被告は自身をギャンブル依存症と認めて「本当の自分を見失っていた」と後悔した。

 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」によると、ギャンブルは1回で多額のもうけが出ると脳内に快楽物質が出て、より強い刺激を求めて賭け金が大きくなる。負けが込むとさらに大きな金額を賭けて負けるという悪循環に陥りやすく、自分ではやめるのが難しくなる。

 FXは短期で大きな利益や損失が出るという点でギャンブルと特徴は同じ。同会の田中紀子代表は「本人はあくまで投資と思っていても、のめり込みやすく、生活に支障が出ることもある。ギャンブルと変わらない」と指摘する。

 ギャンブル依存症問題を考える会が報道に基づいて集計した調査によると、21年5月~23年4月にギャンブルが原因で起きた事件は286件。横領などの企業犯罪157件▽窃盗や詐欺84件▽賭博など21件――だった。

 田中代表は「ギャンブル依存症は意志の強さに関係なく、誰でもなる可能性がある。医師のカウンセリングや自助グループでの意見交換など、家族や第三者が連携して治療や対応に当たることが必要だ」と話した。【安達恒太郎】

毎日新聞

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