民家の庭で無防備に眠るクマ… 全国初「緊急制度」で発砲した瞬間
市街地に出没したクマに全国で初めて「緊急銃猟制度」に基づく発砲許可を出した山形県鶴岡市。クマの研究者で狩猟免許を持ち、同市の鳥獣被害対策を担当する小野寺レイナさん(49)が緊迫の瞬間を振り返った。
◇「こんな無防備で」民家の庭で寝るクマに驚き
9月20日午前11時ごろ、「鶴岡駅近くの民家の庭にクマ1頭がとどまっている」と県警から市に連絡があった。外出先で報告を受けた小野寺さんはすぐに現場に向かった。
クマが見つかった民家周辺では警察官が車や人の通行を規制し、住民らに注意を呼び掛けていた。家の中からは警察官と猟友会員約10人が監視し、警戒した。
クマは庭の木の下で眠っていた。20年近くクマの生態を研究し、地元猟友会委員でもある小野寺さんは、その様子を見て「こんな無防備で」と驚いた。人や自動車の音を避けず活動する近年のクマの行動には憂慮していたが、人の目に触れる場所で寝ているクマを見たのは初めてだった。
◇市町村長判断で発砲可能に
市街地での発砲は鳥獣保護管理法で禁じられており、これまでは人に危害が及ぶ恐れがある場合、警察官が必要な命令を出す警察官職務執行法(警職法)に基づいて捕獲してきた。ここに今年9月から新たな選択肢の緊急銃猟が加わり、住民に弾丸が到達する恐れがないなどの条件を満たせば、市町村長の判断で発砲が可能になった。
この日、鶴岡市の現場では従来の警職法で捕獲する方針がいったん共有された。だが警察は午後0時15分ごろ、動かないクマには発砲できないと判断。これを受けて市はすぐに緊急銃猟での対応に切り替え、午後0時20分ごろ、市長の発砲許可が市幹部を経由して小野寺さんに伝えられた。
安全確認などの最終的な手続きに入ったさ中、クマが目を覚ました。小野寺さんは「その瞬間、住宅街に逃走する事態も頭をよぎった」。クマが向かってきたことからその場で警察官が「撃て」と猟友会員に命令し、駆除された。緊急銃猟に基づく発砲には至らず、人への被害もなかった。
◇最重要事項は「安全と法の順守」
小野寺さんは、緊急銃猟について「クマが動かない膠着(こうちゃく)状態を打開するために作られた法律。自治体の判断ですぐ撃てるようなものでは決してない」と強調する。
スピード感重視のイメージが強いが、「むしろ安全第一と法の順守が最重要事項だ」と話す。住民避難の完了などの安全確保が大前提で、弾丸が石などに当たって跳ねることも想定した安全確認の手順を厳格に踏む必要がある。
現場は駆けつけてみないと分からない難しさもあり、高度な判断が求められる。「技術と経験を備えた猟友会員との連携や人材育成」と「警察や猟友会員と意思疎通ができる関係作り」を重視している。
◇急増する目撃件数
山形県でクマの目撃件数は今年1000件を超え、過去に例のないペースで増加している。今後も冬眠に備え餌を求めて出没するクマが増えることが懸念される。小野寺さんは「庭に柿などの実がなった木を放置したままにしてクマを呼び寄せることがないように、環境を整備してほしい」と注意を呼び掛ける。
これまでの調査と研究で、クマは河川や高速道路ののり面などをたどって木々ややぶに隠れながら市街地に移動してくることが明らかになっている。だが、痕跡からクマの流入部と見られる場所を突き止めても、国や県、民間企業が管理する河川や道路に茂るやぶなどの刈り払いに市町村は手を出せない。
小野寺さんは「方法は明確なのに縦割り社会が難しくさせている」と話し、官民が協力して根本的な対策に乗り出す時期に来ていると訴える。【長南里香】
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