「生きているうちに核兵器廃絶の道筋を」 被団協ノーベル平和賞1年
シンポジウム「ノーベル平和賞から核廃絶へ―被爆者とともに私たちは何ができるか―」(毎日新聞社・立命館大国際平和ミュージアム共催、キッズプロジェクト協賛)が9月29日、京都市北区の立命館大衣笠キャンパスであった。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の金本弘代表理事(80)が基調講演した。【根本佳奈】
◇金本代表理事「死ぬまでがんばる」
ノーベル平和賞受賞後、被爆者と皆さんがどんな活動をしたら核廃絶に向かっていけるか。目に見える活動を考えられたらうれしい。
80歳になって改めて命の尊さを感じ、人生のターニングポイントだと思った。全国の被爆者は10万人を割った。被爆者の願いは「生きている間に核兵器廃絶の道筋だけでも知りたい」ということだ。
(広島に原爆が投下された1945年8月6日、生後9カ月だった私は)15歳の姉におんぶされて爆心地から2・5キロにいた。切符を買うため駅舎にいたが、私が泣くので、姉は電車を見せてやろうと出た。私を下ろした瞬間、ピカッと光を浴びた。私たちはがれきの下敷きになり、しばらくしてはい出した姉が私を探すと、真っ赤な血を流していたという。
姉が「誰か助けて」と言うと、男の人が私を防火用水の中に逆さにして入れた。口の中のがれきを出し、ほおをたたいて体を揺すり、泣くまでそうした。こうして私は生き残ったらしい。
2023年11月に姉が亡くなった後、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市)にある姉の手記を読んだ。手記には「そこで思はぬ父とばったり会って」と書いてあった。「うそ!」と思った。
偶然に父は駅前にいて、私たちを助けに来たのだ。父親だったら、自分がどんなに(熱線で)焼かれていても、絶対に(我が子を)助けると思う。父に助けてもらったとわかったときは泣いた。同時に自分の運命を覚悟した。死ぬまで、核廃絶するまで頑張りたい。
昨年10月、「被団協がノーベル賞をもらったよ」と電話で聞き、「デマを言うな」と思いながら涙が出た。受賞は、こういう(証言の)場をたくさん与えてくれた。まだ世界はヒロシマ、ナガサキを知らない。
授賞式の演説で田中熙巳(てるみ)代表委員は「もっと証言活動を広げなきゃいけない」と言った。話を聞いてくれた人には次の証言者、継承者になってほしいとお願いするようになった。
今、一番考えているのは日本政府のこと。17年に核兵器禁止条約が採択されたときは本当に喜んだ。しかし今年2月、政府は第3回締約国会議へのオブザーバー参加を見送ると表明した。
生きているうちに、政府の姿勢を変えたい。訴える上で、目に見えるものが必要だ。条約に参加してほしいとの署名や各自治体の意見書を増やし、要請行動をしていく。こうした総合的な運動を地道にしていくことが求められるのではないか。
◇かなもと・ひろし
1944年生まれ、名古屋市在住。日本被団協代表理事、愛知県原水爆被災者の会理事長。
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