秋田県の鈴木健太知事は２７日、クマによる人身被害が県内で相次いでいることから、２８日に防衛省を訪れ、小泉進次郎防衛相に自衛隊派遣を要望する考えを明らかにした。自衛隊法上、クマの有害駆除に自衛隊の武器を使うことは規定されていないため、クマ捕獲の後方支援を想定している。

　クマの有害駆除に関わる自衛隊派遣は実現すれば極めて異例。鈴木知事は報道陣の取材に「有害駆除の頭数もかなりの数に上っていて、各市町村で編成している駆除実施隊のマンパワーも既に限界を超えている。（こうした状況が）１カ月以上続いており、国の力を借りないとやっていけない」と述べた。

　知事は、猟友会で編成される駆除実施隊は高齢化が進んでいる上に人数が限られ、箱わなにクマがかかっていても回収できず解体処理も追いつかない状況だと説明。自衛隊による後方支援として、重い箱わなの運搬や設置▽箱わなの見回り▽駆除した個体の解体処理――などを想定しているという。

　鈴木知事は「防衛出動でも治安出動でもないため、おそらく災害派遣の枠組みになるのではないか」と述べた。

　２０２５年度の秋田県内のクマによる人身被害は２７日現在、約５０件に上り、２人が死亡、５２人が重軽傷を負った。過去最悪だった２３年度と同じようなペースで推移している。市街地でのクマの出没も目立っており、今年度はすでに１０００頭以上を有害駆除している。【高橋宗男】