いじめ認知件数、重大事態ともに過去最多 SNSで被害潜在化

2025/10/29 17:04 

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 文部科学省が29日に公表した2024年度の「問題行動・不登校調査」で、小中高と特別支援学校でのいじめの認知件数が前年度比5・0%増の76万9022件と過去最多を更新したことが判明した。心身に深刻な被害が生じている恐れがある重大事態の発生件数は同7・6%増の1405件で、こちらも過去最多となった。交流サイト(SNS)で悪口を書き込まれるなど、いじめ被害が外から見えにくくなっており、早期対応が難しくなっている。

 いじめの認知件数は4年連続の増加となり、調査対象の3万6003校のうちいじめを認知した学校は83・9%を占めた。校種別では小学校で61万612件、中学校で13万5865件、高校で1万8891件、特別支援学校で3654件だった。

 いじめの内容では「冷やかしやからかい、悪口など」がいずれも4~6割前後と最多。「パソコンや携帯電話などで中傷や嫌なことをされる」の件数は毎年増加傾向にある。

 文科省はいじめ認知件数の増加について、教員や児童生徒の間でいじめの定義や認知について理解が広がったことが影響していると分析する。学校の1人1台端末を活用し、児童生徒が自身のメンタルヘルスの悪化やいじめの被害などを記入する「心の健康観察」が25年時点で全国の小学校の54・9%、中学校の57・5%で導入されるなど、いじめ対策の取り組みが進んだことも背景にあるとみている。

 一方、心身や財産に重大な被害が生じたり、長期間の欠席を余儀なくされたりした疑いがある重大事態の発生件数も増加傾向に歯止めがかからない。1405件のうち3分の1にあたる490件は、重大事態として認定される前はいじめとして認知されていなかった。いじめは早期に対応するのが望ましいとされるが、把握できずに重大事態を招いているケースがあるということだ。

 文科省の担当者は「教員が一人で抱え込んでしまうなど、いじめの早期発見や組織的対応に課題があるほか、SNS上で外から見えづらいいじめが増えている」とみている。

 小中高の暴力行為も前年度比18・2%増の12万8859件で過去最多となった。校種別では小学校で8万2997件、中学校で4万39件、高校で5823件だった。このうち児童生徒間で起きる暴力の割合はいずれも7割前後を占める。

 自殺した児童生徒は前年度から16人増の413人だった。児童生徒が置かれていた状況は「不明」が234人で最多。「精神障害」が58人、「家庭不和」が46人と続いた。【西本紗保美】

毎日新聞

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