北海道初のヒグマ緊急銃猟 50分で駆除も…市長「判断難しい」

2025/10/31 18:10 

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 札幌市が10月24日に西区で道内初となるヒグマの緊急銃猟を実施した。現場で通行制限を開始してから50分足らずでクマを駆除した。一方、前日に同じ場所で緊急銃猟を検討した際は、現場に住民が近づいたために中止になった。全国でクマによる人身被害が相次ぐ中、9月に始まった新たな制度による対策は手探りで進められている。

 市によると、24日午後0時20分ごろ、西区西野地区の監視カメラでクマ2頭を確認した。現場は西区役所の西約3・5キロの住宅街。クマがとどまり続けたため、市は道警などと協議し、緊急銃猟の実施を決定した。

 市は同1時50分に市公式サイトで緊急銃猟の実施を公示するとともに、同1時55分から周辺を通行禁止するなどして、住民に弾丸が到達する危険性を排除。猟友会のハンターに発砲を許可し、同2時36、38分にクマ2頭を駆除した。トラブルの発表はなかった。

 秋元克広市長は30日の定例記者会見で今回の緊急銃猟について、「住民の安全のために必要だった。実施の周知や安全の確保に一定の時間がかかると分かった」と述べた。

 秋元市長が「時間」に触れたのは、前日の23日に同じ場所で検討された緊急銃猟が実施に至らず中止になったからだ。

 23日午前8時20分ごろ、市職員が西野地区でクマ2頭を確認。戸別訪問などで緊急銃猟に向けた呼びかけを行い、同9時40分に通行制限や避難誘導を開始した。ところが、屋内退避を求めていた住民の外出を確認。クマが山林に逃げたため、実施に至らず、通行制限は同10時15分に解除された。

 国は緊急銃猟の実施時、自治体に住民の安全確保を求めている。通行制限と避難誘導は各自治体が制度開始前の模擬訓練でも重点的に取り組んでいたが、改めて課題として突きつけられた形だ。秋元市長は記者会見で「どのエリアに制限をかけて、避難を呼びかけるのか。現場でケース・バイ・ケースになり、判断の難しさがある。スムーズな対応をとるため、関係機関で協議したい」と話した。

 自治体の規制に従わなければ罰則もある。国のガイドラインによると、故意に通行禁止・制限措置に違反した場合、3カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される。

 緊急銃猟は、9月1日施行の改正鳥獣保護管理法で認められた制度。市街地で被害が発生しそうな時でも、猟銃が使用できるのは警察官が警察官職務執行法(警職法)に基づいてハンターに命じた場合などに限られていたため、発砲までの時間を短縮する狙いがある。環境省によると、札幌市の緊急銃猟は全国で7例目だった。【水戸健一】

毎日新聞

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