養育費、確実に受け取るには? 宮崎市が始めた新たな取り組み

2025/12/16 15:35 

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 宮崎市は1人親世帯が養育費を確実に受け取れるようにするため、2025年度から保険会社などと協力して新たな仕組みを導入した。養育費をもらえない人は全国的に多いとみられ、同様の制度を取り入れる自治体も出てきている。

 宮崎市はこれまで、養育費については当事者間の公正証書作成費用(上限2万円)や、支払いが滞った際に立て替えや回収を代行する保証会社に払う初年度分の保証料(上限5万円)を補助してきた。ただ、24年度の利用状況は、公正証書の作成支援が44件、養育費の支援は1件にとどまった。

 厚生労働省の調査(21年度)では、「養育費の取り決めをしている」と回答したのは母子世帯で46・7%、父子世帯で28・3%。平均月額は母子世帯で5万485円、父子世帯で2万6992円となっている。一方、実際に養育費を受け取っているのは、母子世帯で28・1%、父子世帯で8・7%にとどまる。

 離婚時に養育費の取り決めを交わしたのに、養育費を実際にもらっている人は限られるのが実態と言える。宮崎市の補助制度の利用が低調だった理由について、市の担当者は「保証会社を利用者自身で探す必要がある上、保証料は自費で払った後に補助を受ける仕組みなので、(手続きの)労力や金銭的な負担が大きかった」と分析。「手続きと資金をサポートすれば、利用促進につながる」として、養育費確保支援事業を4月から始めた。

 利用者は市に公正証書を提出すれば、保証会社への申し込みも市の窓口で受け付ける。初年度の保証料(1カ月分の養育費)は、市が保証会社に支払う仕組みとし、手続きや金銭面の負担を軽減した。翌年度以降は、保証料を自己負担すれば継続してサービスを受けられる。

 事業に協力するのは、保証会社のイントラスト(東京都千代田区)と東京海上日動火災保険だ。イントラストは最大で12カ月分(上限60万円)の養育費を立て替える。東京海上と保険契約を結び、養育費が回収不能となった場合、損害の一定割合が保険金としてイントラストに支払われる。養育費の支払いは長期に及ぶケースが多いため、保険の仕組みを使って保証サービスを支える形にした。

 宮崎市への申請状況は10月末時点で18件。市の担当者は「必要な人に支援が届くように、離婚前の相談時などに制度の周知を図っていきたい」と話す。

 保険会社などと協力した養育費確保の自治体支援は、宮崎市の取り組みが全国で初めてという。東京海上とイントラストは、各地にサービスを広げようとしており、今年6月からは大阪府の羽曳野市と河内長野市、12月からは愛知県小牧市にも採用されている。東京海上によると、ほかの自治体からも多くの問い合わせが来ているという。【嶋田夕子】

毎日新聞

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