大阪・北新地の医院放火から4年 被害者遺族らが支援の拡充訴え

2025/12/16 16:10 

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 大阪・北新地の心療内科クリニックで26人が犠牲になった放火殺人事件から17日で4年となるのを前に、被害者遺族らが16日、記者会見を開いて支援の拡充を訴えた。

 事件は2021年12月17日午前10時20分ごろ、大阪市北区の雑居ビル4階にある「西梅田こころとからだのクリニック」で発生。患者だった谷本盛雄容疑者(当時61歳)=発生から13日後に死亡、不起訴=が放火して、院長の西沢弘太郎さん(当時49歳)や患者ら男女26人が命を奪われた。

 犠牲者の多くが休職や離職を余儀なくされていた患者で、遺族らは直前の収入によって支給額が決められる「犯罪被害者等給付金」の見直しを訴えてきた。

 会見した「犯罪被害補償を求める会」(大阪市)によると、24年に給付金の最低額を320万円から1060万円に引き上げるなど改正された。

 しかし、求める会の川崎敏美事務局長は「まだまだ被害者に寄り添う制度にはなっていない」と話す。

 直前の収入で計算される仕組みも改善されないままだ。求める会は国に対し、自賠責保険と同じように生涯に得られたはずの「逸失利益」を基に給付金を算出すべきだと要望している。

 さらに北新地の事件では容疑者が死亡したため、遺族は本人に損害賠償請求をすることができない。

 他の凶悪事件で遺族が加害者に請求をしても支払われないケースがほとんどだといい、遺族らは国による立て替え払いや加害者への求償制度の創設を求めた。

 諸外国の例にならって犯罪被害者支援に特化した「犯罪被害者庁」の設立も提言した。

 北新地の事件で夫を亡くした女性は会見で、「ある日突然、どん底に突き落とされても『明日を生きていこう』と思える制度に近づいてほしい」と訴えた。【斉藤朋恵、大坪菜々美】

毎日新聞

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