映画「ネタニヤフ調書 汚職と戦争」 監督が伝えたかったこととは
パレスチナ自治区ガザ地区への大規模侵攻を続け、10月10日に停戦が発効した後も爆撃をやめないイスラエル。世界中から非難されても強硬路線を維持するネタニヤフ首相が、汚職の罪で起訴され公判中――という驚くべき事実を描いたドキュメンタリー映画「ネタニヤフ調書 汚職と戦争」が全国で順次公開されている。
◇イスラエルでは上映禁止に
製作したアレクシス・ブルーム監督が毎日新聞のインタビューに応じた。ネタニヤフ首相が2016年から収賄や詐欺、背任容疑で警察の取り調べを受けたことについて「新聞にも載っているし、イスラエルの人々は皆知っている」と話す。
極秘リークされたという首相本人や家族らに対する実際の取り調べ映像や、元側近へのインタビューなどで構成され、疑惑の実態に迫る。イスラエル国内では上映禁止になっている。
ネタニヤフ氏はテロリストと戦う姿勢で人気を集め、外交官から政界入り。1996年に首相となった。
シャンパンや宝飾品など総額約30万ドルにも及ぶ高級品を受け取り、その見返りに贈り主の男性を税制で優遇したり、男性が米国の入国許可証(ビザ)を取り消された際に米高官に便宜を図るよう頼んだりしたとされる。男性が首相からねだられたことを明かす場面にはぎょっとさせられる。
首相には若者に人気があるニュースサイトの編集や人事への介入疑惑もある。「写真を増やせ」「批判を抑えろ」という首相からの要求をサイトのオーナーに伝えたという、首相の選挙参謀を務めた男性の証言が生々しい。その見返りに、オーナーが関わる巨額取引を巡って便宜を図ったことが疑われている。
◇司法の権限縮小も
首相は疑惑を全面的に否定しているが、政治にも影響している。19年11月に収賄や詐欺、背任の罪で起訴され、21年に退陣。中道左派政党などの厳しい批判を浴びつつも22年末に再びトップに復帰し、「パレスチナ人というものは存在しない」と公言する極右政治家らを閣僚に据えた。連立政権の要であり、政策の選択肢を狭める要因になっている。
さらに自身の裁判とは「無関係」としつつ、23年7月に司法の権限を縮小する関連法が成立。多くの国民が反対し、大規模な抗議が続く事態に発展した。25年11月には自身の裁判を巡り、大統領に恩赦を要請している。
映画では元国会議員や情報機関の元幹部らによって、首相がガザ地区を統治するイスラム組織ハマスを長年利用してきたことも示唆される。カタールからの資金でハマスを延命させ、ヨルダン川西岸地区を統治するパレスチナ自治政府を弱体化させる作戦を続けてきたというのだ。尋問の映像で首相は言う。「私は敵対する隣人たちに常にメッセージを送っている。混乱させ、誤解させ、だましておいて彼らの頭を殴りつけるのだ」
◇「弱さに陥らず、声を上げ続けるべきだ」
ブルーム監督は「彼が辞任しないことにイスラエルの誰もが衝撃を受けたが、何年も続く裁判に慣れ、彼があらゆる手段で事態を打開しようとしていることを知っている」と語る。
イスラエル国民の裁判への関心は低い。ブルーム監督は「(ガザでの)戦争の件で国際社会が彼らに背を向けた事実に、とても大きなトラウマを抱えている。裁判は優先順位が低い」と指摘する。ハマスとの関係など重要なことは報じられてはいるが、「日々いろんなことが起こるため、イスラエルの人々はもはや大局を見ることができていない」とも指摘する。
イスラエルは48年の建国前後からパレスチナ人の殺害や迫害を続け、67年にはパレスチナ自治区を占領。土地を奪う入植をやめようとしていない。
首相が裁かれることで根本的な問題は解決するのか。ブルーム監督は「ネタニヤフだけの問題ではないと私も認識している」と話す。「しかし、彼が権力の座にいる限り何も変わらない。首相への批判は反ユダヤ主義ではない。自己検閲の空気が増し、権力に真実を述べることが物議を醸すようになった今日の米国にも通じるが、私たちはある種の弱さに陥らぬよう、うそつきの名前を挙げ続ける必要がある」
大阪市のシアターセブン、京都市の京都シネマ(いずれも上映中)、東京都中野区のポレポレ東中野(来年1月2日~)など全国で順次公開されている。【矢追健介】
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