「犠牲者増やさないで」 高橋まつりさん過労死から10年 母の訴え
広告大手、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺してから25日で10年となる。母幸美さん(62)は24日、厚生労働省で記者会見し、「まつりのような過労死の犠牲者を増やさないでください。私のように大切な家族を失う人を増やさないでください」と声を震わせ、過労死防止を訴えた。
まつりさんは2015年春に電通に入社。眠れないほどの長時間労働とパワハラに追い詰められ、クリスマスの朝に命を絶った。残業時間が急増してうつ病を発症したとして、後に労災が認められた。
幸美さんへの最後のメールには、こうあったという。<大好きで大切なお母さん、さようなら。今までありがとう。仕事も人生も全てがつらいです。お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだから>
まつりさんが亡くなってから、時間外労働の罰則付き上限規制が導入されるなど働き方改革は進んだ。電通も残業時間を減らす取り組みを続ける。ただ、まつりさんは戻らない。幸美さんは「まつりが生きている時に改善していたら命を落とすことはなかったと思うと、悔しくてたまりません」と吐露した。「何度季節が巡っても、私の時間はあの日のままで止まっています。まつりの死が報われるとしたら、『働く人の命を奪わない社会をつくる』という約束だと思います」と語った。
高市早苗首相は今年10月、上野賢一郎厚労相に「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和検討」を指示した。幸美さんは「働き方改革を後退させるようなことが行われるとしたら、私たち遺族は絶対に認めることはできない」と語った。
また首相指示が具体的にどの制度の変更を指しているのか不明なことについて、幸美さんと共に会見した代理人の川人博弁護士は「政府や関係省庁は具体的に問題提起しないと、国民的な議論は困難だ。社会的な議論を行う際には、長時間労働や過重労働のさまざまな犠牲をどのようにみるのか真剣に議論されなければいけない」と語った。【宇多川はるか】
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