中国で「クリスマス禁令」、獄中でイブ迎える牧師も 強まる信仰統制
クリスマスイブの24日、中国・北京市の街角でも巨大ツリーなどの装飾が施された。一方、各地の学校では、児童や生徒がクリスマスを祝うことを禁じる通達が出た模様だ。
習近平指導部は「宗教の中国化」を掲げて信仰への統制を強めており、当局に拘束され、獄中で聖夜を過ごすキリスト教関係者もいる。
中国の都市部では、商業施設や外資系ホテルがさまざまな飾り付けでクリスマスムードを演出している。買い物や飲食など消費を盛り上げるための商業主義的なクリスマスは、市民社会に広く浸透している。
ただ、これがキリスト教の信仰に結びつくと話は別だ。教会でクリスマスのミサを開くことはできても、公安関係者が監視に来たり、未成年者の参加が禁止されたりする事例が報告されている。
◇学校では「禁令」
学校では「クリスマスを祝わないように」との「禁令」が出されたようだ。
国内の交流サイト(SNS)では12月に入ると、「校内でクリスマスの活動に参加するなと連絡が来た」「保護者の連絡網で、子どもにクリスマスを祝わせないよう通知があった」という投稿が相次いだ。
あるキリスト教関係者はSNSで「一体、何を恐れてクリスマスを禁止しようとするのか。自国の文化を守るどころか、世界と隔絶しようとしている」と嘆いた。
習指導部は、人権や自由などの価値観と結びつく西欧の宗教が青少年に浸透することで、共産党の統治基盤が緩むことを警戒しているとみられる。
2018年2月には「学校などの教育機関で宗教活動を実施してはならない」と法律で明文化した。学校外でも、教会などへの未成年者の立ち入りを禁止する地域が広がる。
◇牧師ら一斉拘束も
当局による抑圧は近年、さらに激しさを増している。
今年10月には、キリスト教プロテスタント系の非公認団体「錫安(シオン)教会」の金明日牧師ら約30人が一斉に拘束される事件が起きた。
教会のSNSによると、その後に少なくとも金牧師を含む18人が正式に逮捕されており、クリスマスイブを獄中で迎えることになった。拘束理由は「違法なインターネット利用の容疑」とされるが、詳細は明かされていない。
一斉拘束に先立つ9月29日には、習国家主席が自ら主宰した宗教政策に関する会合で、共産党による「宗教への指導」を徹底するよう指示していた。
習氏は「宗教関係者や信者たちが正しい国家観や歴史観、民族観などを確立するよう導かなければならない」と強調。錫安教会への取り締まりは、習氏の意向を受けた所管部門が、宗教統制の成果を誇示する狙いがあったとみられる。
だがキリスト教のような「外来宗教」が取り締まりを受ける一方、政府の保護を受ける仏教や道教では、聖職者のスキャンダルが後を絶たない。
7月には中国河南省の「少林寺」の住職、釈永信氏が横領などの疑いで摘発され、女性との不適切な関係も明らかになった。
釈氏はこれまで中国仏教協会の副会長を務め、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)代表を務めるなど共産党と蜜月関係にあった人物だ。
信仰を貫いて弾圧を受ける聖職者と、金や名声に溺れる聖職者。「両極端」の事例は、中国における政治と宗教の複雑な関係を映し出していると言えそうだ。【北京・河津啓介】
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