雪の重みで根こそぎ倒木…冬の奥入瀬渓流に起きた異変 青森

2025/12/26 18:14 

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 青森県十和田市の奥入瀬(おいらせ)渓流は、季節によって新緑や紅葉の中、さわやかな水の流れを楽しむ多くの人でにぎわう。

 そんな観光地で12月中旬、異変が起きた。渓流沿いの国道の両脇に立ち並ぶ木々が根元から倒れていたのだ。なぜ、そんな状況になっていたのか。

 奥入瀬渓流は、十和田湖から流出する奥入瀬川が削って形成したU字型の渓谷を流れる。

 約14キロにわたって変化に富む流れや自然林、滝などが点在する。十和田八幡平国立公園の特別保護地区と、国の特別名勝・天然記念物に指定されている。

 渓流沿いには国道102号が通る。その両脇にはブナやトチノキ、タニガワハンノキ、サワグルミなどの広葉樹が茂る。

 倒木の影響により、国道102号の惣辺(そうべ)―子(ね)ノ口間(約10キロ)が13~15日、2回にわたり全面通行止めとなる時間帯があった。

 この前日、青森県の上空は冬型の気圧配置が強まり、湿った雪が降っていた。

 通行止めの直前、トラックでこの区間を通った自営業の男性(54)はこう話す。

 「雪の重みで枝がトラックの屋根の上までかぶさってきて、数人がかりで持ち上げてもらって、かろうじて通ることができた。こんなにひどい状況なのは初めて」

 青森県道路課の担当者は、倒木は湿った雪の重みに木が耐えられなかったのが原因とみている。

 地元で自然保護団体の代表を務める久末正明さん(72)は、倒れた木々が多かったことに驚いたという。

 「約50年暮らしているが、冬に入り、奥入瀬渓流の中上流域でこれほどまとまって湿った雪が降ったことも、大きな倒木被害が出たことも、これまでなかった」

 倒木だけではなく、雪の重みに耐えられず、折れた枝も多かった。路面に落ちて、道をふさいだものは既に撤去され、脇に積まれている。

 実際に倒木の現場を見てみると、高さ約20メートルの木々が渓流にかぶさるように根元から土ごと倒れていた。そんな現場が何カ所もあり、雪の重みのすごさを感じさせた。

 道路脇の斜面でも根こそぎ倒れたり、高さ数メートルのところで幹が折れたり、太い枝が引き裂かれたりしている木があちこちにあった。

 森を覆う大きな枝が折れたために、明るくなっている場所もあった。

 久末さんは「景観だけでなく、生態系にも影響が出るのではないか」と心配する。

 特別保護地区のため、県などは車や人の通行に支障がなければ、倒木などはそのままにしておく。

 冬季、渓流沿いの遊歩道は閉鎖していて、来春の観光シーズンを前に状況を確認し、安全を点検するという。【足立旬子】

毎日新聞

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