「ミニシアターだからできること」 存続危機乗り越えた第七芸術劇場
第七芸術劇場(七芸)は大阪・十三の歓楽街にある93席のミニシアターだ。劇映画だけではなく、多くの社会派ドキュメンタリー作品が上映される。支配人の小坂誠さん(38)は上映番組の編成はもちろん、映写、お客さんの入れ替えやフロントの仕事など、少数のスタッフとともに劇場運営すべての業務をこなす。ネット配信など映画の見方が多様化する中、小坂さんはミニシアターの存在意義を明快に語る。
2020~21年にかけてのコロナ禍では、七芸も存続の危機に立たされたが、小坂さんは「得たものも大きかった」という。寄付金をはじめ、さまざまな形で驚くほどの支援が届いた。「七芸を残したいと思ってくれている人の存在がはっきりと見えた。行政の補助金や自分たちの努力だけでは乗り切れなかった」と今も感謝する。
◇衝撃受けた二つの映画
大阪大大学院在学中の12年、七芸と同じビルに入るミニシアターでアルバイトを始めた小坂さん。思春期の頃、衝撃を受けた二つの映画がある。一つは岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」で、「今まで観た映画とはまったく違う体験をした」という。もう一つは、1969年に開催された伝説の米ロックフェスの記録映画「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」。多くのドキュメンタリー映画に触れるきっかけとなった。
15年には番組編成を手掛けるようになり、その2年後から七芸の仕事にも関わるようになった。上映作品を決めるポイントはさまざまだが、「心がスカッとして明日から頑張ろう! という映画より、自分の生活を立ち止まって考えてしまうような作品が好み」だと言い、「映画は作品だけで完結しない。興行自体が盛り上がることで、その映画が一つの形になっていく」と話す。
◇ミニシアターの使命
ミニシアターの使命については「小さな規模だからこそ、できることがある。新人監督のデビューの場を設けることができるし、登壇する監督や役者さんとの距離が近いので、作り手とお客さんが交流していける」と語る。現在、小坂さんの発案で、お客さん同士が観賞後に感想を語り合う「シネマ・シェアルーム」という交流企画を行っている。そこには、幅広い年代の映画を愛する人たちが集まってくる。
今後は「多様な文化を伝えるロングトークショーなども劇場で継続して開催していきたい」と考えている。「映画館は案外、出会いの場所」と小坂さん。「ミニシアターの灯は消さないという思いは、僕らにもお客さんにもある。ここを守っていきたいと思ってくれる人たちと一緒に歩いていきたい」と思っている。
新春のお薦め作品は「安楽死特区」(高橋伴明監督、七芸は24日公開)。「安楽死についてじっくり考えるきっかけになりますよ」【安田美香】
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