「過酷な生い立ち」裁判員の判断は 安倍元首相銃撃、きょう判決

2026/01/21 00:00 

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 安倍晋三元首相(当時67歳)が2022年7月、奈良市で選挙演説中に銃撃され死亡した事件で起訴された山上徹也被告(45)に対し、奈良地裁(田中伸一裁判長)の裁判員裁判で21日、判決が言い渡される。殺人罪の成立に争いはなく、量刑判断が最大の注目点となっている。検察側が犯行の悪質性、高い計画性、結果の重大性を踏まえて無期懲役を求刑する一方、弁護側は被告の過酷な生い立ちを重視すべきだとして懲役20年以下の判決を求めている。

 検察側は公判で、奈良県警の警察官や科学捜査研究所職員らの証人尋問を通して、被告が試行錯誤の末、計画的に手製銃を製造し、完成した手製銃は武器としか言いようがない激しい威力を備えていたと訴えた。

 複数の弾が不規則に飛ぶ特性がある被告の手製銃が聴衆が集まった演説会場で発砲された点をとりわけ重視。「被告は周囲の誰かが被害に遭ってもおかしくないことを分かっていた。犯行の態様は極めて危険で、著しく悪質」と主張した。

 戦後史において元首相が銃殺された前例はなく、極めて重大な社会的影響をもたらしたことも強調した。

 被告は公判で、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)へ入信したことで家庭が崩壊し、報復のために事件を起こしたと供述した。ただ、実際に殺害したのは教団幹部ではなく、教団との関係を取り沙汰されていた安倍氏で、検察側は「安倍氏は本来の敵ではなかった。人命軽視も甚だしい」と非難した。

 弁護側は、被告の母親や妹、宗教社会学者らを証人に立て教団による宗教被害の立証を試みた。「不遇な生い立ちを抱えながら犯罪に及ばず生きている人もいる。生い立ちは刑罰を大きく軽くするものではない」とする検察側に対し、弁護側は、教団による違法な献金勧誘によって経済的基盤を奪われ、家族間に修復できない葛藤が生じたと指摘。「被告の悲惨な経験が犯行と一直線に強く結びついている。この点が事件の核心。被告の生い立ちは量刑判断で最も重要視されるべきだ」と反論している。

 被告の手製銃は公共の場で発射すると特別に処罰される武器に当たるとして、被告は銃刀法違反(発射)にも問われている。弁護側は、被告の手製銃は大きな弾丸を発射する機能がなく、当時の銃刀法では発射罪に問えないとして一部無罪も主張している。【田辺泰裕】

毎日新聞

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