「友人と行く」カンボジアで行方不明 福岡だけで10人 無事祈る母

2026/03/14 16:00 

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 福岡県内に住む20~30代の男性約10人がカンボジアに渡航後、相次いで行方不明になっていることが福岡県警への取材で判明した。カンボジアには特殊詐欺の拠点があるとされ、県警は犯罪グループに取り込まれた可能性があるとみている。20代の大学生の息子と連絡が取れなくなった50代の母親は取材に「とにかく心配。無事に早く帰ってきてほしい」と胸中を吐露した。

 「友人と旅行に行ってくる」。母親によると、息子は2025年12月、出国の日の朝にそう説明し、軽装で自宅を出た。行き先は東アジアの近隣国で、2泊3日の予定だった。帰国後の予定も入っていた。

 普段からスマートフォンの位置情報を共有しており、その日のうちに目的地の国への入国を確認した。

 ところが翌日、息子の位置情報がカンボジアに移動。予定外の行動で、母親は心配になり、すぐに無料通信アプリ「LINE(ライン)」で息子にメッセージを送信した。

 「何かあったら大使館に行って」

 「普通の旅行だよ」

 その後はスマホの電源が切られたのか、「いつ帰ってくるの」と問いかけても既読にならず、位置情報も途絶えた。

 母親は帰国予定日の翌日に福岡県警に相談し、行方不明届を提出。外務省や現地の日本大使館にも連絡したが、居場所はつかめていない。

 ただ、息子の交友関係をたどって事情を知る人を捜す中、息子が同じアルバイト先の20代の友人男性と旅行に出かけたとの情報が得られた。友人は出国前、周囲に「SNSで知り合った人物から海外に誘われた。経費はその人の会社が出す」などと話し、現地では送迎や通訳のサービスを受けられるとも説明していたという。友人も行方不明のままだ。

 「特殊詐欺の犯罪グループに巻き込まれた可能性がある」。母親は福岡県警からそう説明された。グループは日本の捜査当局による摘発を逃れるため、近年はカンボジアを含めた東南アジアに拠点を置くケースが目立ち、日本に詐欺電話をかける要員として日本人が集められているという。現地の捜査当局に摘発され、身柄が引き渡されるケースも相次いでいるが、氷山の一角とみられる。

 福岡県警によると、行方不明になっている約10人は学生や無職の男性で24年以降にカンボジアに渡航。「月30万円のテレアポのバイトをしてくる」と告げて出国後、1年以上も安否が不明な人もいる。

 今回、取材に応じた母親は「だまされてカンボジアの特殊詐欺の拠点で働いている日本人はたくさんいる可能性があり、息子もその一人かもしれない」と胸の内を語り、こう訴えた。「SNSで知り合った相手の紹介で海外へ渡航するのは慎重に判断してほしい。信頼できる家族や友人に予定や行き先を共有できない旅行は必ず立ち止まってほしい」【栗栖由喜】

毎日新聞

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