マウスのクローン複製に限界 自然交配が哺乳類の子孫作りの鍵か

2026/03/25 01:00 

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 哺乳類の雄と雌による生殖は、クローンのように1個体の複製で生じる有害な変異を取り除くために必要であるという研究成果を、山梨大の若山照彦教授(発生工学)らのチームが24日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで発表した。マウスのクローンからクローンを作り続けると、58世代目で限界を迎えたという。

 研究チームは2005年から20年間、1匹の雌のマウスからクローンを作り、その体細胞から再度クローンを作る「再クローニング」を繰り返した。57世代目までは大人になったが、58世代目の5匹は生後数日で死んだ。

 再クローンの成功率は第1世代の7・4%から徐々に高くなり、26世代目には15・5%に達した。その後は低下し、58世代目は0・6%だった。

 各世代の遺伝子配列を調べると、自然交配を60世代繰り返したマウスと比べ、45世代以降は突然変異が3~4倍多く発生。全ての変異は次世代に伝わり、蓄積されていた。変異は二つで1組の遺伝子の片方で起きていたため、もう一方の正常な遺伝子が働き、57世代目までは生存できていたとみられる。

 生殖能力を調べると、50世代目以降で極端に低下した。ただし、再クローンと普通の雄マウスからの子マウス同士を成長後に交配させると出産数は正常に近づいた。生じた有害な変異が通常交配で取り除かれることが分かった。

 これらから、クローンはオリジナルと全く同じと思われていたが、自然交配より高い割合で変異が生じており、次世代以降も蓄積。哺乳類は雄と雌による生殖でないと、種を維持できないことが明らかになったという。

 クローン技術は、有用な家畜や絶滅危惧種の遺伝資源を永久保存する目的もあり開発されてきた。若山教授は1998年、体細胞からのクローンマウスの作製に世界で初めて成功している。

 若山教授は「クローンが作り続けられないと分かったのは残念だが、複雑な遺伝子の組み合わせで次世代をつなぐ哺乳類のすごさを知ることができた」と話している。【荒木涼子】

毎日新聞

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