父に包丁でたたかれ…暴力受けたタレント、知ってほしい「189」

2026/05/09 08:45 

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 ラジオから聞こえてくる、透明感のある落ち着いた声。名古屋市出身のタレント、レディーナナさん(27)がナビゲーターを務めるラジオ番組は、リスナーにほっとする時間を届ける。

 幼少期から高校1年まで父から暴力を受け続けた虐待サバイバー。タレント活動とは別の児童虐待防止啓発活動家というもう一つの姿で、「189」(近くの児童相談所につながる虐待対応ダイヤル)の周知のため、講演やイベント出演に駆け回る。

 子どもたちに伝えたいのは「助けを求めるのは悪いことではない」ということ。なぜ、虐待されながらも親をかばうのか、なぜ、助けを求められないのか。子どもたちが暴力にからめ捕られていく心理状態を解き明かし、救出するすべを実体験をもとに伝えている。

 ◇「しつけ」で父親から暴力

 日本人の父とブラジル人の母、妹の4人家族に育った。母に対し日常的に暴力を振るっていた父は、しつけと称して幼い自分にも手を上げた。小学6年の時、父の知人宅に行って助けを求めた。だが、知人は困惑したのか家に連絡。迎えに来た父にひどく殴られた。「誰も信用できない」と思うようになった。

 その後も、服の上から尻にスタンガンを当てられるなどの暴力を受け続け、高校1年の時には、包丁で顔をたたかれた。本当のことは言わず、腫れた顔の治療のため学校の保健室へ。数週間通った末、父の暴力を打ち明けた。事実を知った学校側が動いたことで、父は逮捕され、その後、有罪判決を受けた。妹と共に児童養護施設に入所した。

 ◇周囲の大人はSOSを受け止めて

 虐待を受けても、一緒に暮らしていれば親の笑顔を見ることもある。ナナさんは「小さい子の場合、暴力を振るう親でも『本当は優しい人』と思ってしまい、『怒るのは自分が悪いから』と解釈してしまう」と指摘する。

 ナナさんの場合、警察署で事情を聴かれた当初は、父の報復を恐れて黙っていた。そんな自分が心を開くことができたのは、「もう家に帰らなくていいよ。今から安全な所で過ごすから大丈夫」という、大人たちの言葉があったからだ。

 こうした経験から、「子どもが虐待から抜け出す唯一の方法は外部との接触」と考える。そのために、周囲の大人はSOSを受け止められる人になってもらいたいと願う。

 ◇虐待に苦しむ子どもの希望に

 幼少期の過酷な環境下、唯一の心の支えが、歌手レディー・ガガだった。ガガの過去のいじめ被害を知り、「つらさを力に変え、音楽を通して世界中にメッセージを届けている」と心を打たれた。ガガのように虐待に苦しむ子どもたちの希望になりたい。活動名にはそんな願いを込めた。

 高2の時に児童虐待防止団体「ハーレーサンタCLUB NAGOYA」と出合ったのを機に、約10年にわたって啓発に力を注いできた。タレント活動などで発信力を高める目的は「189」を広げることに他ならない。

 今でも親が追ってくる悪夢を見るなど影響を抱える。それでも、児童虐待がなくなる日まで、決して歩みは止めない。【岡村恵子】

 ◇レディーナナ

 児童虐待防止啓発活動家。司会、ラジオDJとしても活躍する。昨年11月、啓発ソングとして初のシングル「Survivor」をリリース。名古屋市の「子どもの未来全力応援アンバサダー」。5月24日、名古屋市の大須・ふれあい広場で、児童虐待防止を訴えるイベント「オレンジリボンパレード」を主催者の一人として開催する。本名非公表。

毎日新聞

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