「好き」「嫌い」の脳内メカニズム解明 東大チームがマウスで実験
相手を好きになったり、嫌いになったりする脳内のメカニズムを明らかにしたと、東京大定量生命科学研究所のチームが9日付の米科学誌サイエンスに発表した。マウスの実験で、人為的に「嫌い」の感情をなくさせたり、作り出したりすることに成功した。うつ病など精神疾患の治療への応用が期待される成果という。
チームはマウスを、別のマウスと一緒のケージに入れてなれた関係にしたうえで、別のマウスの神経活動を操作して攻撃性を持たせた。マウスは、別のマウスから繰り返し攻撃を受けることで「かつて親しかった相手から攻撃される」状況を経験し、避ける行動(=「嫌い」になった)をとった。
他者に関する記憶(社会性記憶)は脳の「海馬」の一部に保存される。この時に脳内で起こったことを調べるため、「海馬」から感情に関わる「へんとう体」、行動や意欲に関わる「側坐核(そくざかく)」につながる神経回路について、光を当てることで特定の細胞の機能を制御する「光遺伝学」の手法を使い、接続を抑制したり、強めたりした。
海馬からへんとう体へつながる神経回路に1ヘルツの弱い刺激を与え、神経細胞同士の接続を弱めると、マウスは攻撃してくる別のマウスを避けなくなった。また、電気ショックを与えて細胞同士の接続を強めると、攻撃マウスを避けるようになった。そのことから、人為的に「嫌い」の感情を思い出せなくさせたり、作り出したりすることに成功したという。
チームの奥山輝大教授(行動神経科学)は「誰かを好きになったり嫌いになったりすることは、私たちの生活の中で大きな割合を占めており、その神経回路の一端を解くことができた。治療の標的を狭めることで、より副作用が少ないうつ病の治療法の開発への応用も期待される」と話した。【垂水友里香】
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