広島商・徳永、好投の裏にあった「先輩たちの悔しさ」 センバツ

2025/03/24 20:32 

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 ◇選抜高校野球2回戦(24日、甲子園)

 ◇○広島商6―2東洋大姫路(兵庫)●

 球速だけではない。最速150キロを超す剛腕が相次ぐなかで、広島商の左腕・徳永啓人(ひろと)が130キロ前後の直球を軸に、強力打線を翻弄(ほんろう)した。

 1回戦は3番手で1回あまりの救援登板だった。それでも「先発にも備えていた」と落ち着いてマウンドに上がった。先発メンバー7人が左打者の東洋大姫路に対し、変化球を低めに集めた。走者を出しても100キロ台の変化球との緩急で粘り強く投げた。

 序盤に6点を奪う打線の援護を受け、五回までで許した安打は二塁打のわずか1本のみ。六回に1点を失っても崩れず、変化球のキレは衰えなかった。

 象徴的だったのは七回だ。犠飛で2点目を失って迎えた2死一塁の場面。左打者の3番・白鳥翔哉真(ひやま)に対し、変化球を使って的を絞らせず、最後は落ちるスライダーで空振り三振を奪った。

 白鳥が「絶対にスライダーで勝負に来ると思っていたが、ボール球を振らされた」と分かっていても打てないほど、球はキレていた。徳永は7回2失点で堂々とマウンドを降りた。

 「良さを引き出してくれる」という心強い相方の存在もあった。1回戦で先発マスクをかぶった片岡亮祐に代わって出場した柳井晶翔は、普段からブルペンでペアを組み、フォームの細かい乱れがあれば指摘してくれる。柳井から「いい球が来ているぞ」と言われたことで、ピンチでも自信を持って投げることができた。

 2022年の第94回大会では、大阪桐蔭との2回戦を前に複数の選手の新型コロナウイルス感染が分かり、出場を辞退した。徳永は「先輩たちの悔しさも感じて投げた」と語った。

 試合後も笑顔は少ない。「広商の歴史を作った先輩たちに恥じないプレーを見せたい」。伝統校のマウンドに立つ誇りがにじんだ。【黒詰拓也】

毎日新聞

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