クラブチームに新たな価値 元Honda鈴鹿・大城戸HCの意識改革

2025/04/13 07:15 

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 津市を拠点とする社会人野球のクラブチーム「三重高虎ベースボールクラブ」のヘッドコーチに企業チームの強豪・Honda鈴鹿(鈴鹿市)で活躍した大城戸匠理さん(33)が就任した。都市対抗と日本選手権の2大大会出場を目標に「高い壁に挑戦したいと思えるチームづくりをしたい」と意気込む。

 「練習から声を出していこう」。ノックバットを持った大城戸さんの声がグラウンドに響く。選手も大きな声で応じ、守備のカバーリングや全力疾走など基本を意識付けしていた。

 兵庫県出身の大城戸さんは香川・寒川高で3年時に夏の甲子園に出場した。法政大に進み、俊足と巧みなバットコントロールを武器に、4年時の東京六大学春季リーグでは首位打者となり、日米大学野球も経験した。

 卒業後は都市対抗優勝経験もあるHonda鈴鹿に入社し、主将も務めた。度重なるケガで28歳で引退し、現在は生命保険会社に勤務する。多忙な日々を送る中、クラブからオファーが届くと、「野球に育ててもらった恩を返したい」と受けることを即断したという。

 1月に就任し、最初に取り組んだのはチームの意識改革だった。10~40代と幅広い年齢層の約30人の選手は働きながら、決して恵まれているとはいえない環境でも週に2回の練習に参加する。「大好きな野球に打ち込めるのは週に2回しかない」と考えると、一つ一つの練習の目的を理解し、全力で取り組むことを習慣化する必要があったという。

 技術だけでなく、チームづくりに足りないと気づいたことは次々と変えた。集合の輪が大きいと感じれば、小さくして監督や選手同士の話が聞こえやすくした。物理的な距離を縮めて意思疎通を明確にし、チームの一体感を高めた。

 普段から選手同士でたたえ合うようにハイタッチを交わし、ミスがあった場合にはロータッチで「大丈夫だ」という気持ちを伝えられるようなコミュニケーションを意識づけた。名門や強豪と呼ばれるチームでプレーしてきた大城戸さんが当然のように実践してきたことを伝えただけでも、選手は新鮮に受け取り、どんどん吸収している手応えがあるという。

 中西健二監督(44)も「選手への影響力は大きい」と、実績を残してきたコーチの指導は選手に刺激になっているという。チーム全体に生まれた新たな価値を「大城戸バリュー」と呼び、前向きな変化に目を細める。

 19日には都市対抗野球東海地区1次岐阜県・三重県予選を迎える。大城戸さんは「全員ができることをちゃんとやれば、結果につながる」と自信を持って大会に挑む。【下村恵美】

毎日新聞

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