事故リハビリで野球始めた小学生 ツーシーム始球式で笑顔 都市対抗

2025/09/03 16:49 

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 第96回都市対抗野球大会は3日、家族始球式があり、神奈川県鎌倉市の小学5年生、小野寺真鳥(まとり)さん(10)が登板した。交通事故によるけがのリハビリのため野球を始めたが、楽しさに目覚め、今ではチームのエースを狙う。捕手を務めた父功一さん(60)との絆も深めた一球だった。

 緊張した面持ちでマウンドに立った真鳥さんが投じたのは「ツーシーム」。変化球をどうしても投げてみたかった。慣れない硬球だったが、ストライクの投球にスタンドからはどよめきが起こった。「ナイスピッチング」。功一さんから声を掛けられるとほっとした表情をみせた。

 真鳥さんは小学2年だった2023年春ごろ、自転車でサッカーの練習に向かう途中で車にはねられた。功一さんが「よく生きていたな」と振り返る大事故で右足を骨折。入院や車いす生活も経験した。医師から運動の許可が出ると、リハビリとして始めたのが功一さんとのキャッチボールだった。足に負担をかけない運動として功一さんが提案した。真鳥さんは幼稚園からサッカーを続けてきたが、野球は初めて。「ボールを投げるのが楽しかった」

 回復後、一度はサッカーに復帰したが、野球の面白さが忘れられず地元の軟式少年野球チームに加入。全国大会にも出る強豪チームで制球の良さを買われ、投手や遊撃手として練習に励んでいる。まだレギュラーではないが、エースを目指し功一さんと自主トレーニングにも取り組む。

 功一さんは子どものころ父親と遊んでもらった記憶がない。父親はけがの影響で足が不自由だったからだ。息子と一緒にスポーツをすることが夢だったという。「家族の絆を確認したい」と始球式に応募した。

 社会人野球とは特別な縁もある。真鳥さんの曽祖父は都市対抗優勝3回を誇る大昭和製紙の野球チーム創設に関わっていた。真鳥さんの夢も社会人野球選手だという。真鳥さんは「緊張したけど、良い球を投げられた」と笑顔。功一さんは「十何年後に社会人野球の選手として帰ってきてほしい。ずしんとした重い球だった」と左手に残る感触をかみしめていた。【田中綾乃】

毎日新聞

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