「今度は自分の番」 旗手の森重航、先輩の姿に自ら重ね ミラノ五輪
今度は自分がバトンを渡す番――。6日(日本時間7日)に開幕したミラノ・コルティナ冬季オリンピックの開会式では、男子スピードスケートの森重航(わたる)選手(25)=オカモトグループ=が日本選手団の旗手を務めた。憧れの2人の先輩旗手に自らを重ね、笑顔で旗を掲げた。
ミラノの街でディナータイムが始まる午後8時。「サッカーの聖地」として知られ、五輪の開会式が開かれるジュゼッペ・メアッツァ競技場(通称サンシーロ)は、熱気に包まれていた。次々と入場する各国のオリンピアンに続き、日本選手団は34番目に登場。先頭を歩く森重選手は華やかな雰囲気を楽しむように、自然と柔らかな表情になった。
森重選手には印象に残っている2人の旗手がいる。一人は、高校の先輩で元男子スピードスケート選手の加藤条治さん(41)。テレビや写真で見た2006年トリノ五輪の旗手で、笑顔で競技場を歩く姿を覚えている。
もう一人は前回の北京五輪女子スピードスケート代表、郷亜里砂さん(38)。森重選手と同じ北海道別海町出身で、「人よりも牛の方が多い」という小さな街は、郷さんが旗手に選ばれると大いに沸いた。
今回、日本オリンピック委員会(JOC)から旗手を打診されたときには競技への影響が一瞬頭をよぎった。だが、子供のころに見て興奮した加藤さんや地元を勇気づけた郷さんの姿を思い起こし、「今度は自分の番」と引き受けた。
初めて五輪に出場した前回大会では、亡き母への思いを胸にレースに臨んだ。
8人兄弟の末っ子で、乳牛牧場を経営する両親に育てられた。4歳ごろから近所のリンクに通い、小学2年生で地元のスケートチームに入った。中学生になり車で片道1時間半かかる釧路市のリンクでの練習が増えると、母は仕事の合間に送り迎えをしてくれた。高校では山形で寮生活を送りながら、スケートの練習に没頭。大学でも世界のライバルと切磋琢磨(せっさたくま)してきた。
だが、19歳になった19年、母はがんで亡くなった。ずっと応援し続けてくれた母に届けたいと練習に打ち込み、22年の北京五輪では男子500メートルで銅メダルを獲得した。
それから4年。今回はさらに「良い色」のメダルを狙う。短距離種目のエースとしての期待を背負い、最近はスケート界の将来にも思いをはせる。帰省した時には地元のスケートチームの子供たちにサインを書いたり、氷上を一緒に滑ったりもしている。
「自分に影響力があるかは分からないけれど……」と謙遜しながらも「自分が子供の頃に五輪選手に憧れて夢中になったように、(スケートを)好きになってくれる子供が増えるようなパフォーマンスを見せたい」と誓った。【ミラノ山田豊】
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