イランのパラ不参加、開会式5時間前に発表 「安全に渡航できない」

2026/03/07 19:50 

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 米国やロシアの国旗が並ぶ掲揚台には不自然な空白ができていた――。6日(日本時間7日)に開幕したミラノ・コルティナ冬季パラリンピック。米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響で、開会式直前にイラン選手団の大会不参加が発表された。緊迫する国際情勢が影を落とす中で始まった「平和の祭典」を観客らは複雑な思いで見つめた。

 イラン選手団の参加見送りが発表されたのは開会式の5時間前だった。ノルディックスキー距離に1人が出場する予定だったが、国際パラリンピック委員会(IPC)は「中東での紛争が続いているため、イタリアへ安全に渡航できない」とする声明を発表した。

 IPCによると、イラン国旗は開会式前に取り外された。会場となった古代ローマの円形闘技場に設けられた掲揚台には米国やイスラエルの国旗が等間隔で並ぶ中、1カ所だけぽっかりとスペースが空いていた。

 一方、ウクライナ侵攻を続けるロシアと同盟国ベラルーシの国旗は掲げられた。ミラノ五輪は「個人の中立選手」としてだったが、今大会は国の代表としての出場を認められた。両国の選手が笑顔で観客席に手を振って入場すると、歓声とともに一部からはブーイングも聞こえた。

 対照的だったのがウクライナだ。ロシア、ベラルーシ勢の参加を認めたIPCへの抗議として開会式をボイコットした。国旗と国名の書かれたプラカードを持ったボランティア2人だけが会場に姿を見せると、観客席からはひときわ大きな拍手が送られた。チェコなど6カ国も「政治的理由」で欠席し、ボランティアによる行進となった。

 式の中で大会組織委員会のジョバンニ・マラゴ会長は「世界が戦争、悲しみ、苦しみにより引き裂かれ、劇的な転換点にある」とあいさつした。

 会場周辺ではさまざまな意見が聞かれた。インド洋に浮かぶセーシェルから来たティエリ・エルミットさん(37)は、IPCの対応を「偽善だ」と言い切る。4年前の北京大会ではロシアとベラルーシを除外したが、今回のイラン攻撃では関係国の出場を制限しなかった。「戦争に関係する人はすべて平等に扱うべきだ」と憤る。

 車いすカーリングの応援に来た埼玉県上尾市の女性(62)は、中東情勢について「世界の分断が深まってしまう」と心配する。顔に国旗を描いてもらうなど、今回の渡航で多くの外国人と交流したといい、「平和の祭典だからこそ、選手たちが思いっきり競技をできるような環境を整備してほしい」と願った。

 開会式会場があるベローナに住むアントニオ・コロンボさん(44)は「(国際情勢の)不安も多いが、選手たちにはしっかりと力を発揮してほしい。全員を歓迎する」とエールを送った。【ベローナ遠藤龍】

毎日新聞

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