バイデン氏の買収中止命令 日鉄とUSスチールが「失望」共同声明

2025/01/04 17:46 

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 バイデン米大統領は3日、日本製鉄によるUSスチール買収計画に中止命令を出した。外国企業による買収は「国家安全保障上の懸念がある」と説明した。日鉄とUSスチールは即座に「決定に失望している。法的権利を守るため、あらゆる手段を追求する」とする共同声明を発表。日鉄は今回の判断に当たり適正な手続きが取られておらず法令違反だとして米政府を提訴する方針だ。

 バイデン氏は声明で「この買収は米国最大の鉄鋼メーカーの一つを外国の支配下に置くものだ」と指摘し「国内で所有・運営される強力な鉄鋼業を維持することは、大統領としての責任だ」と強調。両社に対し30日以内に買収計画を完全かつ恒久的に破棄するよう求めた。

 これに対し、両社は「買収は米国の国家安全保障を強化するものであることは明らかだ」と反論。「同盟国である日本をこのように扱うことは衝撃的で、非常に憂慮すべきことだ」と中止命令を非難した。武藤容治経済産業相も「理解しがたく、残念」とのコメントを出した。

 日鉄は2023年12月に経営不振のUSスチールの買収を発表。実現すれば粗鋼生産量で世界3位の日米連合が誕生する予定だったが、直後に全米鉄鋼労働組合(USW)が反対を表明。トランプ次期大統領も買収阻止を訴え、バイデン氏も実現に難色を示すなど政治問題化していた。

 買収計画は対米外国投資委員会(CFIUS)が国家安全保障上の問題が生じないかを調査してきたものの、委員の間でリスクに関する見解が割れ、バイデン氏に判断を一任していた。買収が頓挫すれば日鉄はUSスチールに対し違約金5億6500万ドル(約890億円)の支払いを迫られる可能性がある。【大久保渉(ワシントン)、道永竜命】

毎日新聞

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