「備蓄米」ってどんなお米? 「もしも」の糧は子ども食堂にも
「備えあれば憂い無し」。農林水産省は日本の食糧安全保障を下支えしてきた「備蓄米」について、これまでの「凶作時」に加えて、流通に支障が生じた場合でも放出できるよう運用を見直すことを決めた。
だが、そもそも備蓄米とはどんなコメなのだろうか。そして役目を終えた備蓄米はどこへいくのだろうか。日本人にとって身近なコメであるにもかかわらず、知られていない側面は多い。
◇ローテーション
備蓄米とは、不作など国内で発生する可能性のある食糧危機に備えて政府が保管している食用米を指すが、その歴史は意外と浅い。
1993年の大凶作で起こった「平成の米騒動」をきっかけに、94年に成立した食糧法でコメの不足に備えて必要な数量を確保することが定められた。
10年に1度の不作や、通常程度の不作が2年連続で発生した場合に対処できるとされる100万トン程度を常時備蓄している。
保管場所はコメの産地に近い場所で、リスク分散の観点から全国にある民間業者の倉庫や施設で保管されている。
備蓄米の特徴はローテーションでの管理だ。
政府は例年播種(はしゅ)前の1月から、その年の秋に収穫されるコメに対し複数回に分けて入札を行い、計約20万トンを買い入れる。
◇「安心」の年間維持費は約478億円
一方、5年持ち越された備蓄米は配合飼料を作る業者に販売され、最終的に飼料として畜産農家の手に渡る。
古い備蓄米が出ていった分を、新たな買い入れによって補っている形だ。
維持管理にかかる費用は安くない。
2023年度に保管でかかった年間経費は約142億円。5年持ち越したことで価値の下がったコメを売って得られた金額から、買い入れにかかった費用を差し引ひくと300億円超の赤字となった。
これらを合わせた年間約478億円が、「もしも」に備える安心の価格と言えそうだ。
◇米どころから
どこの産地のコメが多いのだろうか。
農林水産省によると、24年産備蓄米の落札数量は多い順に、福島県2万6313トン▽新潟県2万4499トン▽青森県2万4416トン――の順で、コメどころの新潟県や東北地方が上位を占める。
「コシヒカリ」など知られた銘柄も含まれ、コメの温度が常に15度以下に保たれるように空調を使って厳格に品質管理されているという。
「非常時に放出する備蓄米であっても品質が劣ってはいけません。保管時の厳しい管理で品質を担保しています」(農水省農産局企画課の担当者)
「出番」がないことは喜ばしいことだが、厳しく品質管理されたおいしいコメが食卓に並ぶことなく役目を終えるのはなんだかもったいない気もする。
だが、備蓄米の利用は法律で「生産量が大幅に落ち込んだ場合に行う」ことが定められている。
近年、不作による放出はないが、11年の東日本大震災の際に被害を受けた流通業者向けに約4万トンが供給されたほか、16年の熊本地震でも活用された。
ところが、新米に切り替わる端境期に、南海トラフ地震の臨時情報で消費者の買いだめが生じるなど、不作以外の要因が絡み合って生じた昨夏の「令和の米騒動」以降、コメの価格高騰が続いている。
消費者の不満の声をくむように、江藤拓農相は1月24日の記者会見で、将来的に国が買い戻すことを条件に政府の備蓄米を販売できるようにする考えを示し、31日に農水省が運用の見直しを決めた。
担当者は「条件付き販売はこれまでにはないので異例かもしれませんが、コメの安定供給を果たすのは国の責務です」と説明した。
◇子どもの空腹も満たす
「主な役割は不作時ですが、それ以外の有効活用にも取り組んでいます。いろんな役割を担う備蓄米について広く知ってほしいです」
農水省の担当者はそうも話した。
政府は備蓄米制度への理解促進や食育の一環として、98年度から学校給食に使うコメについて、備蓄米を一部無償で提供していている。
また20年度には、新型コロナウイルスの影響で学校給食が休止されたことを受け、子どもたちに無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」や「子ども宅食」を無償提供の対象に加えた。【畠山嵩】
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