FRB利下げ見送り パウエル氏、トランプ氏の要求は「影響しない」

2025/05/08 10:43 

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 米連邦準備制度理事会(FRB)は7日、政策金利の誘導目標を4・25~4・5%に維持すると全会一致で決めた。トランプ米政権の関税引き上げで、物価上昇(インフレ)再燃に加え景気悪化リスクも強まっており、経済動向の見極めが必要と判断した。FRBが利下げを見送り政策金利を据え置くのは1月以降、3会合連続。

 「失業率とインフレ率が上昇するリスクがともに高まっている。どちらに転ぶのか分からない」。FRBのパウエル議長は会合後の記者会見で、こう強調。トランプ関税の影響で経済の先行きが今まで以上に不透明になり、当面は様子見を続けるしかないとの説明を繰り返した。

 3月の米消費者物価指数は前年同月比2・4%上昇で、FRBの目標(2・0%)をやや上回る水準にとどまった。だが、トランプ政権は4月2日に市場予想を大幅に上回る規模の「相互関税」を発表。中国に対しては145%の関税を発動しており、今後、関税前に仕入れた在庫が尽きればさまざまなモノの値段が上昇する可能性が強まっている。

 インフレ再燃リスクと同時に強まっているのが米経済の悪化リスクだ。

 パウエル氏は3年ぶりにマイナス成長に陥った1~3月期について、関税発動前の駆け込み輸入という特殊事情が要因との見方を示し、米経済はまだ堅調との見方を示した。だが、各国が求める関税引き下げ交渉が不調に終わったり、7月9日まで停止している相互関税の上乗せ部分が再発動したりすれば、インフレに伴う個人消費の停滞や、先行き不安に伴う企業の設備投資鈍化に見舞われるのは不可避だ。

 FRBは会合後に発表した声明文で、インフレと失業率がともに上昇する恐れについて加筆。経済悪化で雇用環境が悪化するリスクへの警戒感を強めた。

 インフレが再燃する場合は利下げ見送りや再利上げなど「金融引き締め」の判断が必要だが、経済悪化で失業率が上昇するなら追加利下げなど景気下支えのための「金融緩和」が求められる。

 市場では、景気が悪化しているにもかかわらずインフレが加速する「スタグフレーション」に陥るとの懸念も強まっている。金融引き締めと緩和を両にらみする必要に迫られた現状について、パウエル氏は「何がどうなるのか、自信を持って言えることがない」と政策運営の難しさを吐露した。

 一方、トランプ大統領は中央銀行の「政治的独立」の原則に反し、繰り返しパウエル氏に利下げを求めている。パウエル氏は会見で「私たちの仕事に全く影響しない」と断じ、FRBの金融政策の判断には無関係との認識を改めて示した。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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