USスチール買収承認、薄氷の決着 大統領令署名直前まで調整か
日本製鉄によるUSスチール買収について、トランプ大統領は5月下旬、「パートナーシップ」との曖昧な表現を使って歓迎する意向を表明した。だが、米メディアによると、トランプ政権側との協議は、トランプ氏が事実上買収を認める大統領令に署名する直前の12日夜まで続き、「薄氷の決着」だった模様だ。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は、買収容認の条件となる国家安全保障上のリスクを減らす手法に難色を示し続けた。だが、経営上の重要事項に関して通常より強い拒否権を持つ「黄金株」構想に対し、ようやく興味を示した。6月上旬になって、ラトニック商務長官に日鉄側との最終調整を指示したという。
買収期限が6月18日に迫る中、ラトニック氏が率いる政権側のチームと日鉄側は11日から12日深夜にかけ、買収承認に向けた詰めの協議を米商務省の庁舎内で実施。黄金株の有効期限について、日鉄側がトランプ氏の在任中である3~4年を提案したのに対し、政権側は「永久」と譲らずギリギリの調整が続いたとみられる。
協議中の12日夜には、イスラエルがイランの核施設を攻撃するというビッグニュースが飛び込んできて、買収計画に対するトランプ氏の関心はそれた。だがトランプ氏は13日午後、バイデン前政権が1月に決定した日鉄の買収中止命令について、国家安全保障協定を結ぶことなどを条件に見直す大統領令に署名し、事実上、買収は承認された。
買収協議を巡り、トランプ氏は5月23日に、自らの交流サイト(SNS)で、両社のパートナーシップを認める考えを突然表明。1週間後の5月30日には米東部ペンシルベニア州のUSスチール工場を訪れ、再び両社のパートナーシップを歓迎する演説を行った。
これらの言動について、「トランプ氏が事実上、買収を容認した」との観測が広がり、USスチール株は上昇した。ただ、ロイター通信によると、この時点では「取引完了は、ほとんど保証されていなかった」という。
実際、トランプ氏は5月30日の演説後、記者団に「まだ最終合意していない」と発言。その後もUSスチール株の過半取得を認めない考えを公言するなどして、日鉄が譲れない条件にあげていた「USスチールの100%子会社化」を認めるか否かについて、混乱を招いていた。
トランプ氏は「偉大な米製造業」の象徴であるUSスチールは海外企業の手には渡さないと明言しており、パートナーシップを認める一方、買収容認との表現は使わなかった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「トランプ氏は日鉄による買収に反対していた。『パートナーシップ』と呼ぶことで、立場の変化を巧みにごまかした」と分析している。【ワシントン大久保渉】
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