日鉄に米政府から無理難題「少ない」 丸紅経済研究所・今村卓社長

2025/06/19 11:19 

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 日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールの買収を完了した。1年半がかりで決着した大型再編の背景や意義について、米国の政治・経済に詳しい丸紅経済研究所の今村卓社長に聞いた。

 米鉄鋼メーカーの衰退は着実に進行している。米国内の需要は旺盛だが、業績は悪化し、設備の老朽化も進んでいる。関税などの保護主義だけで守っていくのは困難だ。日本製鉄の交渉を受け、新しい血を入れて改革すべきだという考えがトランプ米政権に徐々に浸透していった結果だろう。

 大統領選の結果も日鉄に味方した。買収に猛反発していた全米鉄鋼労働組合(USW)は、(USWを支持基盤とする)バイデン前大統領からトランプ氏に交代して政治的な影響力を失った。

 将来的に米国内の鉄鋼需要が大きく落ち込むことは考えにくい。黄金株や国家安全保障協定で米政府が一定の影響力を持つとしても、米国内の需要が大きく傾かない限り、日鉄の経営に無理難題を突きつけることは少ないとみている。

 当初の計画に比べて日鉄の投資額は大きく膨らむが、老朽化した高炉などの立て直しを考えれば、いずれ必要になる出費だろう。また、世界の鉄鋼メーカーは安価な鋼材を過剰生産する中国勢との戦いを迫られているが、USスチールを再生できれば、日鉄は保護主義で守られた米国市場で非常に優位な立場を築ける。【聞き手・成澤隼人】

毎日新聞

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